7/6再開《音楽xSFxファンタジー戦記》【交響詩】竜の姫と絆のユニゾン ~最強の力は絆の中に。人類に裏切られた天才軍師の俺は六竜姫の激情を調律し和音を奏でて覇道を往く~5サイト33KPV
統一王国の東端に接する険しい山脈の頂上にある天狗族の隠された里。
南の砂漠で海竜族が強襲したとの報告を受け、疾風の遊撃女王セフィラとその補佐役である帝国物流総監ゼファーは、里の長老たちとの最後の交渉に臨んでいた。
すでに里の外の空域にも、天竜族の無機質な光線によって、既に不気味なノイズが走り始めている。
「天竜族の出現により、世界の危機は既に『空』にも及んでいます」
ゼファーは冷静に、そして理詰めで天狗の長に訴える。彼女の論理は、長老たちが信奉する「世界の」を脅かす外部要因の排除が、彼らにとって最も合理的な生存戦略であることを示していた。
「貴方がたが信じる『管理された箱庭』の理は、天竜族という『管理者の削除プログラム』によって、間もなく崩壊します。この空域は、もはや安全ではありません。貴方がたの知恵と、風の力を、我々統一王国に貸してください」
しかし、天狗の長は巨大な翼を広げ、冷笑した。
「馬鹿め。我々が守る空の秩序は、お前たち『バグ』の混沌とは異なる。この里に籠もり、リセットの嵐が過ぎ去るのを待つのが、最も知的な選択だ。我々は、お前たちのような感情に溺れた種族とは組まぬ」
天狗の長の言葉は、セフィラたちの外交の壁が、単なる政治的なものではなく、根源的な「種の誇り」にあることを示していた。
「ちぇっ。相変わらず理屈っぽい、おじいちゃんたちだなー」
セフィラは、長老の言葉に憤慨し、軽装のミニスカート姿で風の魔力を解放した。彼女の愛の形は「自由」であり、支配や排他を最も嫌う。
「ねえ、おじいちゃん。風って、誰にも止められないでしょ? 貴方がいくらこの里に閉じこもったって、空がなくなっちゃったら、貴方が大事にしてるその『誇り』も、風に飛ばされちゃうよ?」
「黙れ! 貴様のような軽薄な小娘に、我らの誇りが理解できるものか!」
長老が激昂し、セフィラに風の刃を放つ。セフィラは軽やかにその刃を躱すが、交渉は完全に決裂した。
「かっちーん!! ゼファー。もういい。風は、理屈じゃないんだよ。空の広さを、あのおじいちゃんたちに教えてあげる時だ!!」
セフィラはそう言うと、長老たちの静止を振り切り、里の奥へと駆け出した。
◇◆◇◆◇
セフィラが向かった先は、里の最奥、最も風が強い修行場だった。そこには、先日セフィラの娘リベルと空飛び競争をした天狗の少年フウガ(12〜13歳)が、無力な怒りを抱えながら訓練していた。
「くそっ、なぜだ! なぜ、あの竜のが、あんなに楽しそうに空を飛べるんだ!」
フウガの目の前には、天竜族の無機質な光線によって空に描かれた亀裂が映っている。彼が愛する風が、神のシステムによって汚染されている光景だ。
「やあ、フウガ。拗ねてないで、一緒に遊ぼうよ」
修行場に現れたセフィラは、無邪気な笑顔でフウガに話しかける。
フウガはセフィラを睨みつけた。
「貴様ら竜族のせいで、空が穢れたんだ! 貴様らの『バグ』が、この世界をリセットさせようとしている!」
「ふふ、バグね。そうかもね」
セフィラは空を見上げ、微笑んだ。
「でもね、フウガ。バグって、楽しいよ? 予測不能で、誰にも縛られない。それが、風の、ボクたちの真の強さなんだ」
その時、修行場の外から、リベル(7歳)とリオ(8歳)の双子が、風の魔力を纏って飛び込んできた。彼らは母の外交戦に合流したのだ。
「フウガ! 一緒に遊ぼうよ!」(リベル)
「フウガ! 天竜族の動きが止まらない。お前の風の力が、今、必要なんだ!」(リオ)
リベルの無邪気な愛の言葉と、リオの武人としての純粋な要請。フウガの心が激しく揺れる。
セフィラは、フウガに最後の問いかけをする。
「貴方の誇り、フウガ。このまま、空がなくなっちゃうのを見ているだけでいいの? リベルやリオが信じる『自由な空』を、大人として守ってあげるのが、貴方の武人の誇りじゃないの?」
フウガは、セフィラの言葉と、長老たちが傍観を選んだことに激しく反発した。彼は自らの翼を広げ、長老たちがいる社殿へ向かって叫んだ。
「長老たちよ! 貴方がたは、天狗族の誇りをどこに置いているのですか! このまま、世界の危機を傍観するだけでいいのか! 俺たちは、リセットされるのを待つだけの『卑怯者』として、未来に語り継がれてもいいのか!?」
フウガの叫びは、里全体に響き渡った。
「竜族が、力を求めているのは、彼らの愛のためです。ですが、俺たちが力を振るうのは、誰にも縛られない『天狗の誇り』のためだ! 俺たちの風は、誰かの命令で吹くのではない! 俺たちの自由な未来のために吹くのだ!」
社殿では、長老たちが戸惑い、囁き合った。
「フウガ……何を言い出すのだ!」
「静粛に! しかし、たしかに世界の危機を傍観した一族として後世に語り継がれるのは……」
天狗の長が重々しく口を開く。
「フウガよ。若者の意見は尊重するが、この危機は我らでは対処できぬ。里の安寧を優先するのは、長としての義務だ!」
フウガは、長老たちの古い理屈を断ち切るように、若者たちに向かって熱く訴えかけた。
「長老たちが決めた理屈で流されるままの人生なんて、俺は選ばない! 俺たちの世代で、この世界を変えていくんだ!」
フウガの熱い訴えに、修行場にいた同年代の若者たちが次々と翼を広げて社殿へ集結する。
「そうだ、フウガの言う通りだ!」
「俺たちの世代で、この空を守る!」
若者たちの圧倒的な賛同の熱気が、長老たちにプレッシャーを与える。
フウガは、長老たちが最も恐れる「歴史的汚名」と、若者の純粋な「武人の誇り」を突きつけた。
「俺は、世界の危機を傍観しただけの卑怯者として語り継がれるのは御免だ! 俺は、自分たちで未来を切り開く、新しい時代の風になる!」
フウガの言葉は、長老たちの心を揺さぶった。彼らは顔を見合わせ、若者たちの熱意と、歴史に汚名を残すことへの恐怖に屈した。
天狗の長が重い溜息をつき、静かに頷いた。
「フウガよ……お前がそこまで言うのなら、私も信じよう。風の封鎖を解け! 我々の誇りにかけて、力を貸す!」
長老たちの決定に、フウガは歓喜の咆哮を上げる。
「俺は、この空を穢す奴らを、武人の誇りにかけて断罪する!」
フウガは巨大な翼を広げ、セフィラとフウガの風の魔力が融合する。
「風よ! 団長の自由な愛のために、空を切り開け!」
セフィラは、フウガの風の魔力を、リベルとリオの無邪気な風の愛で増幅させ、天竜族が展開する空の亀裂に叩き込む。天狗族の風とセフィラ親子の風のユニゾンは、無機質な神の風を吹き飛ばし、東の空域を解放した。
「長老! 空の封鎖を解いてください! 王の理念は、私たちの誇りです!」
フウガの叫びに、天狗の長老たちは、一瞬の戸惑いの後、その排他的な頑なさを捨てた。
「フウガよ……お前が信じるのなら、我々も信じよう」
天狗の長老が、空の亀裂に天狗族の知恵を込めた魔力を注ぎ込む。それは、神のシステムを理解し、そのバグを突くための、古代の知識だった。
「ゼファー! 天狗族の風のユニゾンが成功した! 奴らの知恵と、セフィラの自由を統合しろ! 空の主導権は、私たちが独占する!」
ゼファーは、フウガの熱意と長老の屈服という、非論理的な外交の成功に、感嘆の声を漏らす。
「遅いですよ、ご老人。王の号令が先だ!」
ヒカルの号令が、全軍に響き渡る。東の空域は、セフィラと天狗族の共同戦線によって完全に確保され、神の兵器は空域を失った。
「馬鹿な……! 天狗族が、竜族と手を組んだだと!?」
天竜族が、この計算外の共同戦線に、無機質な動揺を示す。
「フフン。風は、誰にも縛られない。団長の愛は、最強の自由を証明したわ!」
セフィラは、フウガの元へ軽やかに降り立つと、彼の肩を叩いた。
「ありがとうね、フウガ! 最高の風の冒険だったよ!」
セフィラはいたずらっぽくウインクし、フウガの耳元で囁く。
「これからも、リオとリベルの最高の友達でいてね!」
フウガは、セフィラの無邪気な愛の言葉に、一瞬耳まで赤くして、照れくさそうに頷いた。
「フン……。うるさいわね。でも、約束します、セフィラ様。 王の娘たちとの友情は、天狗族の誇りにかけて維持してやるから!」
セフィラは、ヒカルに通信魔術を送る。
『どう、団長!? 最高の外交だと思わない? 王妃の座は、誰にも縛られないこの私が独占するわ!』
その言葉は、ヒカルの心に、セフィラの自由奔放な愛が、時には最強の外交戦略であることを証明したのだった。
【第164話へつづく】