徒然とはいかない喫茶いしかわの日常
×月○日 ふわとろぷるるんくりぃむわらび
店を閉めたあと、ゆかりさんと新作メニューについて相談していたときだ。
「そういえば和樹さん、角のコンビニのふわとろぷるるんくりぃむわらびって食べたことあります?」
「ああ、あれはコンビニスイーツ界の歴史に残りそうな一品ですよね」
慣れとは素晴らしいもので、ゆかりさんの突然の話題転換にもすかさずついていけるようになった。むしろ、今はデザートの話をしていたから、いつもに比べれば関連性が高いと言える。
「わかりますか!? ですよね! ですよね~っ! 私あれ最近冷蔵庫に常備してるくらいで! ほんっとうにおいしいですよね……!」
見解の一致がうれしかったようで、ゆかりさんは握りこぶしを作って身を乗り出してきた。
炎上炎上と気にするわりに、ゆかりさんのほうこそ距離が近いような気がしないでもない。それとも今は誰にも見られていないからノーカウントなんだろうか。
「最近、違う味もいろいろと出てますよね。僕はオーソドックスなやつが好きですけど」
「わかります! ティラミス味とかもがんばってはいたしコンビニスイーツとしては合格なんですけど、本家には一歩も二歩も及ばないというか。新作が出るたび、今度こそ! って、ついつい試しちゃうんですけどね……!」
だいたいのお菓子やスイーツ類は、基本の味が一番バランスよく作られている。中にはプレーンよりおいしい期間限定品などもあるけれど、残念ながらごく一部でしかない。
そうわかっていながら新しい味に飛びつくゆかりさんは、本当にらしいというかなんというか。
「ああん、話してたらまた食べたくなってきちゃいましたぁ……」
甘くやわらかいあの味を思い出しているのか、彼女の頬は瞬く間にゆるんでいき、笑みを形づくる。
それは元気いっぱいな看板娘としての笑顔とは少し違う、気の抜けた笑い方。
ゆかりさんの頬も同じくらい甘くてやわらかそうだ。
触れてみたい……なんて、思うのもおこがましいけれど。