最弱コウモリ幼体に転生したので、血を吸って進化する
ガレオが振り向く前に、支柱の裏から飛び出した。
正面の入口には、網と金属線がある。
だから、古い排水穴から採石場の奥へ回った。
左の翼はまだ開ききらない。
落ちる勢いを右の翼で変え、ガレオの背中へ向かう。
男は振り向きながら弓を上げた。
矢が近すぎる。
体を捻っても、完全には避けられない。
鏃が脇腹の毛を裂いた。
俺はそのまま弓を持つ腕へ爪を立てる。
革鎧の肩へ滑り、牙は届かなかった。
ガレオが背中を支柱へ打ちつける。
俺の体も木と革の間に挟まれた。
息が抜け、爪が外れる。
床へ落ちる前に、右の翼を開いた。
ガレオの短槍が下から来る。
槍先を避け、柄へ爪をかける。
そのまま腕の外側へ回った。
傷ついた手の布へ牙を立てる。
布と革の隙間から、血が口へ入った。
ガレオが腕を振る。
体が槍の柄へ当たり、牙が抜けた。
床へ転がる。
「やっぱり血か」
ガレオは弓を捨て、短槍を両手で持った。
耳には布が詰められている。
音撃を警戒している。
俺は低く鳴いた。
採石場の形が返ってくる。
入口の線。
落ちる網。
床へ置かれた二本の矢。
ガレオの後ろには、俺が持ち込んだ金属線がある。
支柱の根元を通し、反対側の石へ巻いた。
輪は床すれすれに置いている。
俺はガレオの右へ飛んだ。
男も右へ回り、槍先をこちらへ向ける。
線の手前で足が止まった。
見つかった。
ガレオは踏まず、槍の石突きで線を押さえる。
そのまま外そうとする。
俺は音撃を放った。
狭い採石場の壁が音を返す。
耳を塞いだガレオの体が、一度だけ揺れた。
倒れない。
槍からも手を離さない。
それでも、石突きが線から外れた。
俺は爪にかけていた端を引く。
輪が縮まり、ガレオの足首へかかった。
男が槍を振る。
穂先が右の翼を掠めた。
線を離さず、石柱の裏へ飛ぶ。
金属線が支柱を回り、ガレオの脚を横へ引いた。
片膝が床へ落ちる。
すぐに短槍が線へ振り下ろされた。
一度では切れない。
二度目が来る前に、俺はガレオへ向かった。
男は膝をついたまま槍を突く。
避けられない。
左の翼を畳み、体を槍の横へ投げた。
穂先が肩の下へ入る。
熱い痛みが背中まで抜けた。
それでも前へ進む。
槍が刺さったまま、ガレオの胸へ爪を立てた。
革鎧が邪魔をする。
首へ上がろうとすると、傷ついた手で体を掴まれた。
指が背中へ食い込む。
床へ叩きつけられる前に、ガレオへ意味を送った。
『後ろ』
男の目が、反射的に背後へ動いた。
ほんの一瞬だった。
俺は手から抜け、顎の下へ回る。
革の襟と首の隙間へ牙を押し込んだ。
温かい血が一気に口へ入る。
ガレオが喉を鳴らした。
短槍を離し、両手で俺を引き剥がそうとする。
傷ついた手には力が入らない。
もう片方の指が翼の付け根を掴む。
痛い。
骨が軋む。
離せば、もう一度槍を取られる。
俺は吸った。
血と一緒に、ガレオの力が流れ込んでくる。
首を押さえる手が弱くなる。
男は膝をついたまま、線に絡んだ脚を引いた。
俺ごと壁際へ倒れる。
肩に刺さった槍が石へ当たり、さらに深く入った。
声が出そうになった。
牙は抜かなかった。
ガレオの心音が速くなる。
何度か大きく打ち、急に間が空いた。
男の指が背中から離れる。
心音が、もう一度だけ鳴った。
その後は何も返ってこなかった。
俺はすぐに牙を抜けなかった。
口の中にあるのは、人間の血だ。
魔物の血より薄く、鉄の味が強い。
それでも、体は拒まなかった。
むしろ、もっと吸おうとしている。
俺は牙を抜き、ガレオの胸から離れた。
男の目は開いたままだった。
名前も知っている。
言葉も分かった。
帰る場所があるのかもしれない。
それでも、ガレオは俺を殺そうとし、俺もガレオを殺した。
肩の槍を抜こうとして、痛みで爪が止まる。
先に、周りの音を確かめた。
近づく足音はない。
その後で、ガレオの腰にある小袋と短い刃へ目が向いた。
人を殺した後に考えたのが、逃げ道と使える道具だった。
吐き気は来なかった。
口元に残った血を、舌が先に舐め取った。
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ガレオ・ダンを討伐しました。
経験値を取得しました。
HPが回復しました。
Lvが20から23に上昇しました。
最大HP:88から95に上昇しました。
最大MP:30から35に上昇しました。
筋力:33から38に上昇しました。
耐久:40から45に上昇しました。
敏捷:60から68に上昇しました。
感知:68から75に上昇しました。
魔力:28から33に上昇しました。
器用:35から40に上昇しました。
精神:33から38に上昇しました。
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体力は戻ったが、左の翼の裂傷も、肩の下に刺さった槍も消えていない。
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固有スキル【因子吸収Lv1】が発動しました。
因子【人間因子】を取得しました。
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因子【人間因子】
言語器官、直立歩行、道具適応、魔力循環などが含まれる。
現在の肉体では、まだ適応できない。
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進化条件の一部を満たしました。
【血牙魔蝙蝠】
未達条件:Lv/吸血熟練
達成条件:強敵の血/人間の血/魔力器官
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ガレオから得た因子は、今の体では使えない。
それでも、人間の血を吸ったことは、次の進化へ残っている。
俺はガレオの小袋から、残った金属線と布を引き出した。
短い刃も欲しいが、今の体では重い。
持てるものだけを選ぶ。
ガレオは動かなかった。
その横で、落ちた灯りだけがまだ燃えていた。