攻略組が帰った後から始まるVRMMO 〜イベントに遅れた俺だけが、誰にも拾われなかったユニークを見つける〜
《生息域調査クエスト》のイベントが終わってから数日後。
俺はリヴィアと王都で待ち合わせていた。
待ち合わせ場所は星花祭のフィナーレの翌日に、リヴィアと偶然会った水路沿いだ。
少し早く着いたので、待っている間に装備画面を開く。
イベント報酬でもらったアイテムのうち、すぐに使えそうだったアクセサリーは二つあった。
どちらもすでに装備している。
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《猟風の腕輪》
分類:アクセサリー/腕
レアリティ:レア
〈基礎性能〉
・物理防御力が向上する。
〈追加効果〉
・怯み耐性が上昇する。
・インベントリ枠+10
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「インベントリが増えるのは普通にありがたいな」
探索していると、素材だけじゃなく用途の分からないものまで拾って持ち帰ることがある。
10枠も増えるなら、俺にはかなり使いやすい。
続いて首元に装備した方を確認する。
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《大獣牙の首飾り》
分類:アクセサリー/首
レアリティ:アンコモン
〈基礎性能〉
・物理攻撃力が向上する。
〈追加効果〉
・HP自然回復速度がやや向上する。
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こっちも派手な効果ではないけど、今まで使っていたコモン等級のアクセサリーよりはいい。
そして一番気になっていたのは靴装備だった。
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《月影の軽装靴》
分類:防具(軽装備)/靴
レアリティ:レア
装備可能Lv:51
〈基礎性能〉
・物理防御力が向上する。
・魔法防御力が向上する。
〈追加効果〉
・移動速度が上昇する。
・夜間および暗所では移動時の足音が軽減され、感知されにくくなる。
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「……やっぱりこの靴、追加効果がかなりいいな」
移動速度だけでも嬉しいのに、暗い場所では感知されにくくなる。
スカウトの俺とはかなり相性がよさそうだ。
ただし、装備可能Lvは51。
「あと2レベル……か」
レベル条件が合わない装備をするとステータスにペナルティが発生する。
それに万が一死に戻った場合、装備している物よりインベントリに入れている所持品の方がドロップ対象になりやすいと聞いたことがある。
今は装備としては使えないし、倉庫に預けておこう。
あとは《偽狐耳の髪飾り》と《もふもふのしっぽ》だろうか。
改めて見ると、どちらも見た目装備なのにレアリティは《レア》だった。
「ロヴェルさんあたりは喜びそうだな……まあ、もう持ってるかもしれない」
獣の耳や尻尾を眺めている姿なら簡単に想像できる。
今度会ったときに聞いてみてもいいかもしれない。
俺は装備画面を閉じて、水路を眺めながらぼんやり待つ。
少しして、水路の向こうの通りから見覚えのあるエルフのプレイヤーが歩いてきた。
「すみません。お待たせしました」
「いえ、俺もさっき来たところです」
返事をしてから、ふと気づく。
前ならリヴィアとは文字のやり取りだった。
《旅鳥の宿》から戻る夜道で初めて聞いた声が、今は普通に隣から聞こえている。
あの後から、リヴィアはボイスチャットを使うようになった。
「イベント、お疲れさまでした」
「ザンさんもお疲れさまでした。最後の共同討伐は参加されましたか?」
「今回は最初からがっつり参加できました。《鎧蜥ドルガーレン》なんですが」
「え、それって、レベル60帯のボス……でしたよね」
「そうです。砂門都市カルダで《探索支援》を追いかけていたら共同討伐パーティに誘ってもらえて、そのまま……」
「……なんかザンさんらしいですね」
リヴィアが少し笑った。
「リヴィアさんは共同討伐、参加できたんですか?」
「はい。レベル50帯の《夜熊ヴァルゴン》です」
「あ、じゃあ拠点は……ダークエルフ領域の町でしたっけ」
「はい。《夜月の町ノクサ》です。行ったことがないところに行ってみたくて。それで『夜月の町』って名前を見て、行ってみようかなと思ったんです」
「実際どうでした?」
「ずっと夜なんです」
「ずっと夜?」
「ノクサは昼にならないんです。街の外も月明かりや星明かりの中で過ごすので、最初は時間の感覚がおかしくなりました。でも慣れてくると、すごく綺麗でしたよ」
「へえ……それ聞くと俺も一回行ってみたいですね。イベントは結構進めたんですか?」
「私は《護衛支援》を一番やりました。自分の職的にもやりやすかったので。でも《探索支援》や《掃討支援》も少しずつやりました」
「俺は結局《探索支援》メインでした」
「やっぱりですか」
「やっぱりって」
「だってザンさんですし」
リヴィアが微笑み、俺もつられて笑った。
「それと……空いた時間に二次職の転職クエストも進めてました」
「あ、そっちも進めてたんですね」
「はい。サブ職の《吟遊詩人》の方も落ち着いたので」
俺が一つ気になったものを追い続けていた間にも、リヴィアは知らない町で護衛に参加したり、探索に出たり、転職クエストを進めたりしていたらしい。
同じイベント期間でもずいぶん違う遊び方だ。
「そういえば……《夜熊ヴァルゴン》はどんなボスだったんですか?」
「えっと、HPが半分を切ったあたりから何度も咆哮するようになって……それが大変でした。広い範囲に弱体効果が付くので、解除して支援を入れ直してもまた次が来るんです」
「うわ……」
「それに咆哮の後は周りに黒い霧が広がって、月明かりまで遮られるんです。攻撃するときに目や爪が一瞬だけ光るので、まったく見えないわけじゃないんですけど……」
「それはかなり厄介ですね」
「でも、私のパーティとは別だったんですけど、熊の盾職の方がいたんです」
「熊の……盾職ですか」
「相手も熊なのにずっと正面で受けてくれていて。周りが暗くなっても離れないし、咆哮が来ても一番楽しそうでした」
――それ、熊坊さんじゃないだろうな……。
熊のビーストフォークで強い盾職。
条件だけなら他にもいるはずだけど、ずいぶん心当たりがある。
「そういえば《吟遊詩人》になったときに覚えた歌曲スキルって、ヴァルゴン戦でも使ってみたんですか?」
「……《返し歌》のことですよね。それが……使えなかったんです」
「使えなかった?」
「はい。スキル自体は使えるんですけど、発動するたびに一節歌わないといけなくて……」
「え、毎回……ですか?」
「……はい。スキル情報を共有しますね」
リヴィアが《返し歌》の情報を共有する。
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《返し歌》
分類:歌曲スキル
他者から自身が受けた支援効果一つをもとに、その性質に応じた《返歌効果》へ変換して味方へ届ける。
発動時に〈単体返歌〉または〈集団返歌〉を選択する。
自身が自身へ付与した支援効果、および返歌効果は対象外。
同一の支援効果から返歌できるのは一度に限る。
発動条件:一節歌唱
リキャスト:10分
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「なるほど……受けた支援を返せるんですね。すごいスキルだ」
「実際、共同討伐でも使えそうな場面はあったのですが……」
リヴィアが少し言葉を止める。
「……無理でした」
「ああ……」
「一節だけなんですが……結局、まだ……使えませんでした」
「そうだったんですね」
共同討伐では普通にボイスチャットを使えていたらしい。それでもいざ歌うとなると、また違うのかもしれない。
どうして以前は文字だけだったのか、俺はリヴィアに聞いたことはない。
だから、そのことを口に出すのはやめておいた。
「また使えそうな場面があったら、そのとき試してみればいいんじゃないですか」
「はい……そうですね」
リヴィアが少しだけ笑う。
「今度はもう少し少ないところから試してみます」
そう言った後、リヴィアはすぐには次の言葉を続けなかった。
一度こちらを見てから、少しだけ視線を水路へ落とす。
「あの……ザンさんがよければ、その……一度……」
「俺ですか?」
「はい。《返し歌》がちゃんと使えるか、一度試してみたくて……」
「ああ、全然大丈夫ですよ。俺もすごい興味ありますし」
「本当ですか?」
「はい。ぜひ」
「ありがとうございます」
リヴィアが少しほっとしたように笑った。
《返し歌》が実際にどんな効果になるのかは俺も気になっている。
しばらくしてリヴィアがもう一度こちらを見る。
「あの……話してた通り、見てもらいたいものがあるんです」