ティアドロップ(涙の雫)
過密スケジュールをやりくりしてもらい、久しぶりに関西に帰る。待ち合わせは新大阪駅。
利絵とは少し早く待ち合わせて、カフェで近況を話し合った。
「今度、女優デビューか? すごいね。出来上がったら絶対に教えてよ」 と利絵は喜んでくれるのだが、明菜は今まで自分が載った雑誌を買ったことも見たこともない。
そこにいる自分は本当の自分ではないと思っているからだ。
しかも、今回のドラマの話も自分がやりたくて得た仕事ではない。ギャラがいいと言われると、
生活のためについ受けてしまう。嫌ではないが、そのために特別努力するでもなく、
何かが憑依して別人格がやってくれているので、達成感もない。
沢山の女性の中から選ばれたというのに、これという実感も喜びもないのだから仕方ない。
少しずつ有名になっているのは、この頃のギャラがいいのでなんとなく気付いているが、
大学にあまり行けなくなっていることの方が悩ましい。 利絵も大学生活を楽しんでいるようだ。
ダンスクラブに入り、早速頭角を現しているらしい。体操選手として世界に羽ばたける実力を
持っていたのだから、そのオーラは半端ではないだろう。 スポーツ選手を支えるスポーツトレーナーを目指して勉強しているらしいが、「支える」というのがそもそもキャラに合っていない気がする。
誰かのために生きるタイプではなく、ど真ん中で主役を張れる、まさにトップが似合う気がする。
過酷なスポーツは腰を痛めて無理だとしても、利絵が輝ける場は他にもある。
明菜は「大学生活の中で見つけられたらいいな」と太鼓判を押す。 男友達は沢山いるらしいが、
恋人はまだいないようだ。結婚を視野に入れて付き合うので、ついダメ出しをしてしまう。
しかも案外奥手で真面目すぎるところがある。 端から見ると、男たちがザックザックと切り倒され、
失恋の痛みで倒れているようなイメージだが、気を使いすぎて疲れるタイプらしい。
明菜は、京都大学医学部ヨット部の合宿で素敵な恋人ができることを期待している。
利絵は男に媚びない。自分らしさを表現するファッションも、まるで少年のようだ。
ボーイッシュなキャップを被り、流行りのTシャツとブルージーンズのラフなスタイルが、
スリムでしなやかな体を際立たせている。 ジーンズもヨーロッパの有名ブランドのものだ。
ヨットパーカーも、この日のために買ったらしい。