42歳治療院経営者と18歳食いしん坊JKが送る、御朱印集め&ご当地グルメ紀行 ~美人親子に迫られるなんてあるわけない!天然の俺は気が付かない~
京都で迎える三日目の朝。三人は準備を整えると食事会場へと向かった。
相変わらず朝から食欲旺盛な三人であった。
「私、昨日の夜はさとしさんが添い寝してくれたおかげで、ぐっすり眠れました」
「私もとても気持ちよく眠れたわ。添い寝以上のことをしてくれなかったのは少し不満ですけどね」
「……二人ともよく眠れたのならよかったよ」
さとしは苦笑しながら答える。すると美波が、悪戯っぽくさとしを覗き込んだ。
「さとしさんは眠れました?」
「あはは……。二人が魅力的すぎて、ちょっとね……」
力なく笑うさとしであった。
「そんな風に思ってくれるなら、襲ってくれればよかったのに!」
美波が爆弾発言を投下する。
「さとしさんは紳士だからね。でも……昨夜はとっても元気そうで、少し辛そうでしたよ」
美鈴が意味ありげな流し目を送ると、さとしの顔がみるみるうちに赤く染まっていく。
(うっ……! 元気になっていたのがバレている……!?)
「お母さん、元気なのに辛いってどういうこと?」
首を傾げる美波。
(美波、そこは細かく突っ込まないでくれー!)
心の中で絶叫するさとしだった。
「ふふ……。美波もそのうちわかるようになるわ。ねぇ、さとしさん?」
ーーー
食事を終えた三人は部屋に戻り、荷物をまとめていく。
「お昼過ぎにはさとしさんとお別れして、三原に帰らないといけないなんて寂しいなぁ……」
「またすぐに会えるさ! 次は愛知県か埼玉県での再会になるかな」
「そうね。美波はちゃんと旅行に行けるように、勉強を進めておかないとだめよ」
「さとしさんと会うためなら、私、頑張れる気がするわ!」
「美波に再会できるのを楽しみにしているからね」
さとしがそう言うと、美鈴がすかさず反応した。
「楽しみなのは美波だけですか?」
「もちろん、美鈴さんに会えるのも楽しみにしていますよ」
ーーー
チェックアウトを済ませた三人はいったん駅に行き、コインロッカーに荷物を預けた。
「この後はここから歩いて行ける、文子天満宮とへ行きましょう」
さとしの提案に乗る二人であった。
京都駅から7~8分歩くと文子天満宮の周辺に到着した。
この辺りは完全に住宅街で、その中に神社が一軒佇んでいた。
「わぁ、本当に普通の町中にあるんだね」
美波が周囲を見回しながら感心したように呟く。
「そうだね。ここは北野天満宮の前身で、天神信仰発祥の地と言われているんだよ」
さとしが解説を加えながら鳥居をくぐる。
「文子天満宮は菅原道真公を主祭神としていて、道真公の乳母である『』が、道真公の亡くなった後に自らの庭に祠を立てたのが始まりなんだ。文子がその祠に参拝していると、道真公から『京都の北野の地に祀ってほしい』とのお告げがあり、それが北野天満宮の創建へと繋がっていったらしいよ」
「へぇ……じゃあ、文子さんがここに祠を作らなかったら、北野天満宮は創建されなかったのかもしれないんですね」
美鈴が厳かな境内を見渡しつつ、感慨深げに頷いた。
「だからこの文子神社は、北野天満宮の前身神社と言われているんだよ」
三人はお参りを済ませると御朱印を頂戴する。
その御朱印には大きく5つの丸が花びらのように押印されていた。
「ここにもやっぱり、梅の花の押印が付てるんですね」
「そうだね。ちなみに道真公と梅の花の関係で『伝説』っていうお話があるんだけど知っているかい?」
「知らないです。どんなお話なんですか?」
「昔、道真公は無実の罪で大宰府に飛ばされることになったんだ……」
「無実で飛ばされっちゃたんですか。道真さん、可愛そう……」
「そうなんだよ。その時に、庭の梅の木に『東風吹かば 匂ひおこせよ 梅の花 主なしとて 春な忘れそ(春の風が吹いたら、主人がいなくても忘れずに美しい花を咲かせて香りを届けておくれ)』と歌を詠んで別れを告げたんだ」
「歌で別れを告げるなんて素敵ね」
美鈴がうっとりとした顔をする。
「さとしさんも素敵な歌でお別れを言ってくれるのかしら?」
美鈴はさとしを見ながら笑みを浮かべた。
「僕に歌の才はないですから!」
焦るさとしであった。
「それよりも話の続きです。道真公が歌を呼んで太宰府に去ると、すると、その梅の木が道真公を慕うあまり、京都から太宰府まで一晩で飛んでいったという有名な伝説が残っているんだよ。これが飛梅伝説の内容だね」
「なんだか素敵なお話ですね。私もさとしさんにそんな歌うたわれたら、すぐに会いに行っちゃいそうです」
「私もすぐに会いに行くわ!」
「なら二人の笑顔が見たくなったら。歌をメールで送るかな」
さとしはそう言うと、三人は楽しそうに笑い合うのであった。
そんな三人を京都から飛んできた梅の花が楽しそうに見ていた。