異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
がっくりきた。なんだか解らないけれど、とっても気が抜けた。
背凭れへ身を預ける。「マオさん?」
「みんな、大丈夫かなあ-。来年絶対きてくれますよねえー」
「入山する訳ですから、レントには来るでしょうね」
「でも、ここに来てくれるかは、……ああー」
「大丈夫ですよ。きっと来てくれます。約束を破るような子達じゃないでしょう?俺があれくらいの頃は、鼻持ちならない途轍もなくいやなやつだったけど、彼らは違います」
ツァリアスさんは小さく苦笑いする。「いい子達ばかりでしょう」
「ですけどおー」
テーブルへ突っ伏した。もうレントを出たかな。みんな。
ツァリアスさんが立ち上がって、オーブンから天板をとりだす。「お茶の時間、クッキーでいいですかね」
「……いいと思いますー」
「ふふ。マオさん、あの子達が大好きなんですね」
そう。そうだ。それだ。
姿勢をただした。「そう、そうなんですよう。あの子達いい子ばかりで、俺にお礼云ってくれて。もうたまんないんですよお。ううう」
涙がわいてくる。袖口で拭った。みんないい子で、可愛かった。淋しいよう。
ツァリアスさんがくすくすして、次の天板をいれる。甘い匂いがふわっと漂ってきた。ツァリアスさん、上達はやいなあ。
「彼らは、素直だし、才能もある。ああいう子達が、下山してから国に戻れば、きっと……でも、優秀な者程残るんですよね。矛盾だなあ……」
「はあ」
「マオさん、晩ご飯の仕込みはいいんですか?」
「あ……そうですね……」
哀しいけど、淋しいけど、やらなくちゃいけない。はあー。
晩ご飯は、キャベツ・人参・れんこん・じゃがいも・とり手羽・血入りの腸詰めのぎゅうぎゅう焼き。ホールの黒こしょうをぱらぱら振ってあって、食べる時に好みでレモンをしぼってもらう。パンはレアディさんとこの。デザートは梨のコンポート。
つくって収納しておけばいいから、ぎゅうぎゅう焼きをどんどん焼いて、そうしながらコンポートもつくる。さみしさを紛らわせようとせかせか作業する俺に、ツァリアスさんは戸惑いつつもついてきた。
「ツァリアスさん、こっち見ててください」
「はい」
「かきまぜると崩れますから。でも、焦がさないで」
「はい」
梨のコンポートは、梨のジュースとはちみつで梨を煮るという豪華版である。ジュースも還元したものなのかもしれない。
焼き上がったぎゅうぎゅう焼きを収納し、次のバットを滑りこませ、ツァリアスさんの隣へ戻る。
「たっだいまーっす!!」
食堂から元気な声がする。ツァリアスさんがはっとしてそちらを見た。「帰ってきたみたいですねえ。お出迎えってしていいんですか」
「ええ勿論」
「じゃ、ツァリアスさん、行ってくださいよ。俺はこれを見てなくちゃあ」
お鍋を示して云うと、ツァリアスさんは表情をゆるめ、ありがとうございますと食堂へ走って行った。