異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
お塩屋さんをあとにし、ハーバラムさんの案内で、なんとお風呂屋さんへ連れて行ってもらった。
お風呂!
今度は肩透かしをくらうこともない。本当にお風呂だった。
ただし、大浴場じゃなく、個室ばっかり。カラオケボックスみたいに個室のお風呂がずらりと並んでいる。なので必然的に料金が高い。しかも時間制限付きで、一時間でエスター70個。揚げパンいっぱい食べられる。回数券を買うと少しだけ安くなる仕組みなんだそう。
お風呂は嬉しいので、満喫した。お水は川から引いて、それを熱魔法であたためているとか。魔法って便利だなあ。
お風呂で垢を落とし、じっくりあたたまった。さっぱりしたあー。
服を着こんでロビーへ向かう。髪をダストくんに編んでもらわないといけない。ちゃんとネックレスや指環はつけているから、大丈夫だと思うけど。
全然大丈夫じゃなかった。めちゃくちゃ絡まれたのだ。
廊下に出て暫く歩くと、別のお風呂から出てきたお兄さんとぶつかった。
ぼーっとしてたので、こっちが悪かったのだろう。だからちゃんと謝った。謝ったのだが……。
「そういうのはいいからさあ」
壁際に追い込まれている。このおにいさん酔っぱらってない? お酒の匂いがする。
顎をくいっとされた。目が据わってますよ。やばくね?
おにいさんは顔を近付けてくる。壁にべったり張り付いたが、距離が。近い。「はっきりしようや。お前、いく」
しゅっと軽い音がした。
?
お兄さんが倒れる、え? 脳梗塞とか?
屈みこんだ。「だ、だいじょうぶですか?」
「なにしてるの」
澄んだ、か細い声がする。
仰ぐと、小柄な女の子が立っていた。
15・6歳だと思う。身長155cmくらいで、ワンピース? ドレス? (違いが解らん)の袖から覗く手首が細い。でも、巨乳だ。
髪は、青みの強い、淡い紫。さらっさらストレート。みぞおち辺りまでの長さだ。眉だけ真っ白。猫みたいな目をしている。瞳は澄んだ金色。肌は白い。
「あー」倒れたお兄さんを見る。もう一度女の子を仰ぐ。「急病みたいなので、介抱を?」
「わたしがやったんだけれど」
は?
女の子は服のスカート部分をぱたぱたはたいた。絹地らしいし、フリルがあしらわれていて豪華な感じだ。
わたしがやったとは?
女の子は、スカート部分からなにやら取り出した。
凄く大きなポケットがあるのか、収納空間なのか、そういう細工を施してあるのか。
出てきたのは、剣だ。ちゃんとした剣。短剣ではなく。
「これで殴った」
はい?