異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
思案草を無事掘り起こしたので、残りの雑草を駆除にかかる。偸利はわざわざ口に出さなくてもつかえるくらい慣れた。魔法って便利だなあ~。水とか火とか出せたらもっと便利なのにな~。
雑草退治を終え、倉庫へスコップを戻す。観賞用の草木の剪定なんかは出来ていないから、完璧とは云えないが、毀家みたいな状態は脱した。今のところは充分だろう。
次は料理の準備だな! おなかすいたし!
厩のすぐ脇にある、水が流れてきてたまっている、水槽? で手をゆすいだ。動物に水を飲ませるためのものかな。牛とか馬って、お水を沢山飲むと聴いたことがある。
んー、問題は、水を出せないことだ。今日はセロベルさんに頼る。井戸の水は、野菜の泥を落とすくらいならともかく、食事用にはつかえそうもない。こまめに水を掻い出していれば、何日かでつかえるようになるだろう。水がめがあるってことはどこからか水を持って来ていたのだろうし。
意気揚々、おもやへ向かう。
おもての門から前庭を抜けてすぐに建っているのがおもやで、おそらく二階建て。
中庭をはさんで別棟がある。そちらも多分二階建てで、おもやより横に長い。おもやの北側にある渡り廊下でつながっているが、渡り廊下は蔦塗れだったので、別棟はつかわれていないのかもしれない。偸利で退治してあるから、見た目は多少恢復。
食堂のカウンタの向こうは、棚があって、でもほとんど空っぽだった。お酒の壜でも置いていたのかなあ?
で、アーチの向こうが厨房。きちんと掃除されている雰囲気だった。
それと、カウンタ近くにドアがあって、その奥は解らん。リエナさんがその奥へ這入って行ったから、セロベルさんのお母さんの部屋があるのかも。
あ、部屋数訊いてなかった、採らぬ狸のなんとやらだなあ、と考えているうちに辿り着く。まあいい。食堂で儲ければいいんじゃん。ほかのとこよりお安くするとか、色々とやりようはあるだろうし。
ていうかそれでなんとかならなかったら俺が困る。借金のかたにこの宿がとられたりしたらことだ。住むとこなくなる。
食堂へ這入った。「セロベルさん、草むしり終わりましたよお」
ん。
誰だろ、ひとが増えてる?
セロベルさんは困惑顔でこちらを向く。立っているセロベルさんの傍の椅子に、こがらな人物が座っていた。フードを目深にかぶって、ローブを体へ巻きつけるようにしていて、丈の長いワンピースで足も見えない。
その人物がこちらへ顔を向けた。