異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
グロッシェさんは、すみませんと謝り、井戸端で顔を洗ってくると出て行った。
セロベルさんが肩を落とす。「あ……悪かったな、ダスト」
「だ、だからこわくないってば」
「いいよ。慣れてるからな。俺も、母さんも」
セロベルさんは、溜め息を吐いて、椅子へ腰掛ける。「父方の親族と絶縁してる理由もそれだ」
興味ないからご飯つくってもいいかな? いいよね!
おなかが空いていたので話を聴くどころではない。ふらふらと厨房へ向かった。こんな時こそ気配を消すのだ。見切れ職人の名が泣くぞ。
厨房に到達した。
ご飯、ご飯。さっき、市場でパンも買ったから、主食はそれでいい。重曹でふくらましているタイプのパンはべらぼうに安かった。発酵も重曹もなしのやつも買ってある。時間がたつとかたくて食べられたものじゃないからさっさとくえ、と売り手のおっちゃんに云われたが、収納空間は時間が停まっている(仮)なので大丈夫な筈。
さて、献立はどうしよう。
腕組みした。材料は色々ある。……うむ。
まないたは……どうやらセロベルさんが洗ってくれたらしく、まないた、お鍋、包丁は綺麗になっていた。ありがたい。
まずは、パンに切り込みをいれる。コッペパンくらいのやつの、横に。
そこに、バターはないので(高級品らしく、市場にはなかった)油をひとたらし。それから、井戸から水を汲んで来て、キャベツ。トマト・クレソンを洗う。キャベツは千切り、トマトはみじん切り、クレソンはざく切り。キャベツとクレソンは軽く炒めて塩こしょう。胡椒は市場でホールで買ったもので、ミルが見当たらないので崩潰で砕いた。便利。
トマトは、刻んだデーツ・レーズンと一緒に煮る。お酢・お塩・こしょう・タイム・オレガノ・クローブ・唐辛子・コリアンダー・ミントなどをちょっとづついれる。とろっとしてきたら、ウスターソースもどきだ。
あとは、腸詰めをぱりっと炙って、キャベツ・クレソンと一緒にパンへはさみ、ウスターソースもどきをかける。
異世界ホットドッグ。こんなもんかあ。
セロベルさんと、ダストくんと、ハーバラムさんと、グロッシェさん。人数分つくろう。
包丁は切れ味がいい。きちんと手入れされているということだ。この身で思い知った。
くそう。お腹空いて眩暈がしたのだ。そして、気付いたら指をざっくりやっていた。
ふらふらっと外へ出る。もうご飯はほとんどできたし。血を見られたら騒ぎになりそうだし。なによりこれでくびになりたくない!
という訳で犠牲になっておくれどうだんつつじ。お前裏庭にもいっぱいあったし。