異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
耳持ち、というか、獣っぽいひと達はそこまで扱いが悪いのか。
「ラッツァクは相当な金を上納してる。ウロアは耳持ちが絡まなければまともだし、商売も巧い。耳持ちがどうなろうと知ったことじゃないんだろ」
そう云うダストくんは苦虫を噛み潰したような表情だ。「俺は……耳持ちは、得意じゃないけど、だからって無視したり、排除するのはおかしい。まして、危険にさらされてるかもしれないのに、見て見ぬふりだなんて」
「荒れ地近くの村では、耳持ちが生まれると荒れ地に捨てる……って噂があってね。それであいつ、わたしにかまをかけたんだろうね」
ハーバラムさんはちょっとだけ、本当の微笑みを見せ、自分の頭を示す。
「お生憎さま、わたしの親は耳持ちなんだ。そんな噂は嘘っぱちだよ」
「で」ダストくんは不機嫌げだ。「そういう諸々が解ってても、俺達はどうしようもない、と」
「ダスト坊は正義漢だねえ」
「だって」
「解ってるよ。でも方法がない。だろ?借金のかただって話なら、お金を用意すりゃいい。でもない袖は振れない。ダスト坊の村も、うちの村も、流石によその人間は助けられないよ」
ダストくんが俯く。ハーバラムさんは、ダストくんの頬を優しくつついた。「でもね、さっきも云ったけど、ラッツァクは最近事業を拡大してる。商人協会へも話を通さなきゃいけないような商売にも手を出した。今なら、昔と違ってうちの協会も動いてくれる筈だよ。叩けば埃はかならず出る」
お金は、だって、四月の雨亭の負債だけで貝貨600枚前後である。それが何人もとなると、慥かに賄いきれない。
もどかしいな。悪いことをしているだろうに、どうしようもない。もとの世界なら警察に通報するところだけど……。
「あの」
声を低める。「もし、ウロアってひとが悪いことをしてるって解ったら、誰がどう罰するんです?」
「レントはの直轄だからね」ハーバラムさんは髪を耳へ掛けた。口を噤んで、少しの間考え込む。「と云っても、実際は、傭兵協会、商人協会、職人聯合会で治めてる。そのみっつの協議で決まるらしい……うちの村だったら、長老や智慧者で意見が一致するまで話し合うんだけど、レントはどうなんだろう」
「お金でどうにかなったりしない?」
その心配は共通だったよう。ハーバラムさんが否定も肯定もせず、目を伏せたから。