異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
ハンバーグは小さめにしてあるので、どちらかと云うとミートボールかも。おいしけりゃどっちでもいいけど。
朝食を提供しつつ、主力商品であるクッキーを焼く。マシュマロそのものも好評だったので、こちらは黄身だけで焼いて、白身はマシュマロづくりにつかうことにした。
生地だけつくってしまって、天板へ落とすのはサッディレくんとアーレンセさんにやってもらった。その間に、必死でメレンゲをつくり、マシュマロにする。これ辛い。
と思っていたら、セロベルさんがやってくれた。お茶の葉をむらす時間を利用してちゃっちゃかかきまぜ、あっという間にメレンゲが完成した。腕力!
いやおいしいものを食べられるのだからいいか。しかし俺の五分はなんだったのか。
天板をオーブンへいれたらちょっと休憩だ。マシュマロは半分型に流しいれ、半分は収納空間へいれてある。
まかないに舌鼓を打っていると、アーレンセさんが不思議そうに云った。「マオさんって、収納空間の時間停滞が凄く強いんですね」
「……みたい?」
「時間停滞が強いひとって、少ししかものをいれられないと思っていました」
え、そういう制約があるもんなの?
アーレンセさんはにっこりして、クッキーの詰まったかごを持ち上げる。「ひとによるんですね。これ、カウンタまで持っていきます」
「あ、はい」
怪しまれはしなかった……かな。
アーチから食堂を覗いた。「セロベルさん、食べます?」
「俺は後で。サッディレ、アーレンセ、お前ら先にくえよ」
サッディレくんとアーレンセさんは、はーい、と返事をして、こちらへやってくる。
アーレンセさんのはお客さんと同じ、サッディレくんはハンバーグのみだ。用意して、焼きたてのクッキーを包んだものをかごに詰める。
ふたりは相当うまが合うらしく、楽しそうにお喋りしながらまかないを食べている。「はい、これどうぞ」
「わ、旨そう」
「いただきます」
マシュマロをはさんだクッキーだ。お皿にのせて、テーブルへ出した。
クッキーのかごを持って食堂へ行く。カウンタへ置いた。「あ? お前傭兵等級あがったの?」
「そ」
セロベルさんとメイラさんが喋っている。ライティエさんがメイラさんの隣でパンにハンバーグをはさんで食べていた。「めんどくさいけど規約だからさ。肩がこるったら」
クッキーの包みをひとつ、かごから出した。メイラさんとライティエさんのテーブルへ近付く。
「メイラさん、これおまけ」クッキーをメイラさんのトレイへ置いた。「今朝の魔法の分」
メイラさんは、高いよ、と云ったくせに、お金はとらなかったのだ。