異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
追加の定食を仕上げ、セロベルさんに運んでもらった。
「おはよう」
リエナさんだ。木箱を持っている。例の夫婦が、お礼だと云って、毎日たまごを届けてくれているのだ。
「ここでいいかしら?」
「いつもありがとうございます。食べます? ごはん」
「こっちこそいつもごめんね。これ、お代がわり」
リエナさんは木箱を下し、その上に置いていたハムを取り上げた。差し出されたのをうけとる。
「いいのに」
「気が済まないんだもの。いつもおいしいものもらってるから」
サッディレくん達が席を立った。揃って給仕に戻る。
いれかわりでリエナさんと、お皿を洗っていたグロッシェさんが座る。ふたり分、食事を用意した。「たまごのふわふわね。これ、自分でもつくってみたの。おいしかったわ」
「リエナさん、器用なんですね」
「そうでもないわ」
クッキーを包んでいると、セロベルさんが戻った。「おお、リエナ。おはよう」
「おはようセロベル。また顔色がよくなったわね」
「まあな。マオ、メイラに弁当つくってくれねえ? 昼、戻れそうにねえらしい」
「解りました。ライティエさんは?」
「要るってよ」
セロベルさんは苦笑していた。
ローストビーフのサンドウィッチと、いちごジャムのラップサンドウィッチを拵えた。ライティエさんの分は五人前だ。
お弁当を持って、メイラさんとライティエさんは、元気よくでていった。ライティエさんは練兵場に出入りできないが、資料整理や依頼の受付処理など、協会本部での雑用をこなすそう。
……練兵場に出入りできないって。
朝食時が過ぎて、食堂からはお客さんが居なくなる。グロッシェさんが超特急でお掃除をしてくれている間、元種の様子を見た。いい感じ……かな?
「あの」
びくっとする。
エウゼくんだ。俯いて、手を握りしめている。
「なに?」
「……おみず、ください」
お水。
ゴブレットにお水を注ぎ、差し出した。「これで足りる?」
「……ありがとう」
エウゼくんは会釈して、ぱっと出て行った。……ルッタさんに飲ませるつもりかな。
「まお?」グロッシェさんのお手伝いをしていたセロベルさんが、アーチから顔を覗かせる。「誰か来たか?」
「エウゼくん。お水くださいって」
「ああ……様子見てくるわ」
お願いしますと送り出した。
セロベルさんはすぐに戻ってきた。顔色の悪いルッタさんと、涙ぐんでいるエウゼくんを連れて。
「あの、お侘びに来たのに、迷惑を」
息苦しそうに謝罪するのを遮る。「おなかすいたでしょう。ご飯食べますか」