異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
それぞれ、一人前の半量づつ、お皿に盛りつけた。セロベルさんが耳をぱたぱたさせている。
「……たべたい?」
お皿を掲げるとセロベルさんは目を逸らした。「……食べてみたい」
セロベルさん、サッディレくん、アーレンセさんの分も用意してから、姉弟へお皿を運んだ。
ふたりはちょこんと椅子に腰かけ、空になったマグをじっと見詰めていた。「お待たせしました。どうぞ」
「あっ、あの……まあ!」
お皿をテーブルへ置くと、ふたりとも吃驚したらしかった。
エウゼくんが目をこぼれおちそうに瞠っている。
「これ……ルーシュねえちゃんの?」
「あの、もしかして、ディファーズ系なんですか?!」
ルッタさんがこちらを見上げた。切実そうだ。「ルーシュねえさまのこと……ああ……知る訳ないですよね。ごめんなさい、わたし、取り乱して……」
声を震わせて、俯いてしまった。エウゼがいたたまれなそうにしている。
「とりあえず、食べませんか? おなか空いてるでしょ」
フォークを渡した。ふたりは俯いたままだが、低声でお祈りをしている。食べる元気があるなら大丈夫。
厨房へ戻ると、三人ともおいしそうにパスタを食べていた。
「どう?」
「旨いっす。な、アーレンセ」
「うん。わたしはこの黄色いのが好きです」
「食べにくいけど旨い」
おおむね好評のようだ。よかった。
自分の分も用意して、食べた。はやめの昼食だ。いいチーズだからか、カルボナーラがおいしい。
食べ終えてから、セロベルさんと食堂へ行った。お茶のおかわりと、焼きりんごを持っていったのだが、姉弟は泣いていた。
「これもどうぞ」
「……す、すみません、色々と」
ルッタさんは手巾で涙を拭う。「とてもおいしかったです。魔力も恢復できたと思いますので、お水を」
「その代わりに麺をもらいましたから。ところで、相談なんですけど、麺料理を出そうと思っているので、毎朝売りに来てくれませんか?」
ぽかんとされてしまった。俺はたたみかける。
「できません?」
「できなくは……」
「じゃあ、お願いしますね」
ルッタさんは、狐につままれたような表情をした。
エウゼは、焼きりんごを食べながら、こっくりこっくり舟をこぎだした。その様子はあどけなく、すりなんてしそうにはない。
「答えたくなかったら結構ですけど」
「はい」
「エウゼくんは、どうしてすりなんか?」
ルッタさんが俯く。
「……借金が……」
「借金?」
こっくり頷いたルッタさんが、訥々と語ったのは、だった。