異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
借金をしたのはルーシュさん。ルッタさんは、勝手に保証人にされていた。
勿論、自分は知らない、姉とは縁を切った、と云った。
が、男のひとりが、姉は賭けで大損した、あんたが払わないなら弟も居る、と云った。
賭け、というのは、ルッタさんには、ありそうなことに思えた。だから、弟は勘弁してくれと頼み、返済を余儀なくされた。
不安だった。
不安だったから、弟は井に預けた。子どもの巾着切りは、井に住まわせてもらえる。エウゼくんにくわしいことは伝えなかったが、借金とりとの会話は断片的に聴こえていたらしく、ねえちゃんどっか行くの? こわいとこ? と心配してきた。
ルッタさんはつい、ルーシュ姉さまがいい加減だからと、愚痴をこぼしてしまった。
エウゼくんを井に預け、井から出ないように云い含めてレントへ戻り、ルッタさんはなんとか借金を返そうとした。
ふた月ほどして、ルーシュさんが帰ってきた。
当然、ルッタさんは姉を責めた。なんてことをしてくれたんだと。
ルーシュさんは、はじめとぼけていたが、督促状を見ると目の色を変えた。
保証人なんて知らない。
あんたやエウゼは関わりないって、話してくる。
そう云って、出て行ったっきり、ルーシュさんは行方が知れない。
しかも、最悪なことに、次に来た時借金取りが云ったのだ。ルーシュは最後の賭けで、弟を賭けた、それで負けた。弟を勘弁してもらう約束でうちから借りた金を相手へ渡した。うちはたてかえてやったんだ。証文には、返せなくなったらたてかえた金は引き上げるとある、と。
つまり、返済が滞ったら、弟が連れていかれる。だから返さないわけにはいかなくなった。
保証人なんて知らない、というのは嘘だろう。ルーシュさんは昔から小さな嘘をよくついていた。おおかた、酔ってよく読みもせずに書類をつくって金を借りたのだ。話してくるというのも嘘で、レントから逃げてしまったに違いない。
ルッタさんは定期的に借金を返しに行っていたのだが、脅しかなにかの確認か、家に時折借金とりが来るようになった。
稼いだ金をほとんど渡し、売れ残りのパスタでおなかを満たし、更に日雇いの荷運び仕事も掛け持ちした。それでも返済は滞った。借金は減らない。返しても返しても焼け石に水だ。
ふた月ほど前、みなりのいい男が突然やってきた。
姉に金を貸した商会の、偉いひとらしい。そのひとは親切で、色々と心配しているようなことを云い、しかしこちらも商売だから、と眉尻を下げた。
でも、弟さんは、巾着切りでしょう。
きちんと学べば、入山もかなうかもしれない。
どうだろう、自分は開拓者への奉仕として、貧しい子どもや耳持ちへの支援をしているのだが、弟さんを預けてはくれませんか?
勿論、借金のことも、尽力しましょう。