異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
「あの」片手を軽くあげた。「借金ってことは、お金を借りた訳です。利息はこれこれこのくらい、と決めて。ですよね。で、お金を返すとなったら、借りた分だけでなく利息分も返さないといけない」
「……はい」
「でもですよ? 例えば俺が、ルッタさんから銀貨10枚、利息は月に一割、で借りたとします」
ルッタさんは、思案げにしつつ、こっくり頷く。エウゼくんはきょとん。セロベルさんは、耳がぱたぱたしていた。
「月に一割ですから、次の月には借金の総額は銀貨11枚です。俺は暫くその借金を放っておきました。ややこしいから単利で考えますね。借りて二十ヶ月後には借金は銀貨30枚になっています。そこで俺は、銀貨を15枚用意して、ルッタさんへ返します。ここで、元本を返せば、もう利息は付きませんよね?」
「……あの」
「はい」
「たんりってなんですか?」
そこからっすか。
目を瞑る。開ける。
「単利は、元本だけに利息が付く。利息にも利息が付くのは複利とか重利と云います。いわゆるゆきだりゅま」噛んでないよ俺はなにもしらない。「雪だるま式に増えていくってやつです」
「……はあ」
「説明うけましたか?」
「いいえ」ルッタさんは不思議そうに頭を振った。「説明をうけても借金は減りませんし」
俺は思わず頭を抱えた。いや、仕方ないか。多分十代の女の子だもん。知らないよな。
顔を上げる。「つまり。元本を返さない限り利息は減りません。さっきの例だと、銀貨15枚で利息分を返せば、元本はまったく減っていないので次の月にはまた銀貨1枚借金が増えます。複利はもっと深刻ですよ。書類に書いてないですか?」
「書類……持ってますけど……」
見せて下さいと思わず前のめりになった。
ルッタさんは収納空間からそれをとりだす。羊皮紙だった。
文字は読める。意味も解った。業者のあくどさも。
「ルッタさん。書面上は、単利で、十日に元本の百分の一の利息が付くことになってます」
「じゃあ、元本さえ返せば……」
「最後に返済したのはいつですか」
「え。十月十日です」
「その日に借りなおしたことになってますよ」
「かりなおす?」
「その日に、同じ商会から借金総額引くルッタさんが返すために用意していた分、を借りて、前の借金を清算したことになってるんです」
ルッタさんは、訳が解らない、という顔をした。そうだわな。
「つまり、ルッタさんは単利をわざわざ複利にしてるようなものです。次はこのお金に利息が付きますからね」
「……え? ……え?」