異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
「お客さん」は、いつも三人。
いかにもなディファーズ系で、ダークブロンドに濃いグレーの瞳の美男子、「かみなり」さん。
ディファーズ系かシアイル系か、そのミックスか、の、淡い茶髪に緑の瞳の、「ふたご」さん。
裾野らしい格好の、灰色の髪に茶色い目の、「されき」さん。
「されき」が、このあいだ俺にキスしてきたやつなんじゃん?
わー、拳が出ちゃうかも! 鼻とか顎を狙ってね!
ついたら、大体、一時間くらい宴会がある。要するに、品定めの時間。娼妓たちは精一杯アピールする。
なにせ、選ばれたら一晩で銀貨150枚くれる。しかも、気にいられたらそのまま囲われることもある。大概はそれ狙いだ。
不特定多数のお客をとるというのは、やっぱりリスクが大きい。金銭トラブルで怪我をすることもあるし、殺人鬼に惨殺された娼妓も居る。
今回は心配ないのかな、と思ったが、ティーくんは上役の指示で来ているらしい。リーニくんがそう云って、ティーくんは否定しなかった。それに、リーニくんは縄張りでの顔役=ボスで、信頼できる筋からこの話を持ちかけられている。だから心配いらないよ、とのこと。
ついでに、リーニくんが行った二回とも、女性の姿もあった。男性の娼妓より女性の娼妓のほうがはるかに厳重に守られていて、滅多なことでは元締めが派遣しない。女性が居た以上はちゃんとしたところと思っていい、そう。
ヴェンゼくんは、賭場で直にスカウトされたらしい。
「誰に?」
「えっと、自分はふたごだって云ってた」
わざわざ出張ってきているのか。やっぱり、怪しい。
リーニくんがにこっとした。「マオは?」
「……えーと。名簿のところに居るひと」
「ああ、ヴァンさんか。彼、僕らに優しいよね。お金持ちのひととつないでくれたり。ティーも世話になったろ?」
「まあ」ティーくんは爪を弾くのをやめた。「あのひとが選んだんだ……」
ティーくんの目付きが和らいだ。ヴァンさんは、南と東の娼妓には評判がいいよう。
馬車が停まった。
すぐに扉が開いて、ランタンを持った黒尽くめの人物が立っているのが見える。その背後にも、黒尽くめの人物が数名居た。「お疲れさまです。靴を脱いで、こちらをつけて下さい」
黒い、幅広のリボンが配られる。
リーニくんが早速、靴を脱ぎ、目を覆った。器用に結んでしまうと、黒尽くめの人物のひとりが、リーニくんを横抱きにして運んでいった。
リーニくんの靴は、きちんと揃えられている。