異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
かみなりが苦笑いする。「ああ、それは違うんだよ。ヴィサリオーシャの道具じゃないんだ」
ヴィサリオーシャ……投扇興みたいなやつか。
「違うの?」
リーニくんがきょとんとする。ふたごがにまにました。
「もっと楽しいことだよ可愛い梨ちゃん。ふたりきりになったら開けてやろう」
ティーくんの目がきらっとする。
目が合った。ティーくんは憎々しげに俺を睨んでから、かみなりのゴブレットへお酒を注ぐ。「お客さん」はワイン、俺達はウィスキーみたいなやつ、だな。
かみなりが手を叩いた。「今、ふたごが云ったけど……この箱の中身は、君達へのご褒美だよ。ベッドでふたりきりになったら開けてあげよう。嬉しすぎて悲鳴をあげちゃうだろうな」
「マオは泣いてしまうだろうねえ」
されきが俺の腰の辺りを撫でた。気色悪い。
宴会は続いた。俺はすすめられるだけお酒を呑み、されきの無遠慮な手にも耐えて、話を聴きだそうとした。が、埒が明かない。されきは俺を口説こうとしつこくて、ウロアの話にのってこない。
リーニくんがくすくす笑った。ふたごがどんどん呑ませているから、酔ったのだ。潰れてしまいそうだけど……。
「ふたごさん。だめ。ぼく、しごと、できなくなっちゃう」
「しなくていいんだよ」ふたごはよだれを垂らさんばかりだ。「だって、俺が君を食べるんだからね。君は大人しくしてりゃいい」
「だーめ、色々できるんだよ、ぼくはね?」
「しなくていい。しなくっても、いいんだよ」
唐突に吐き気がした。「お手洗い、どこ?」
「向こうだよ。あの奥」
されきが、扉の真向かいを示す。俺は立ちあがった。
「呑みすぎたみたい……」
「そりゃ大事だ。ひとりで行ける?」
「あ」ヴェンゼくんがさっと支えてくれた。「俺、ついていきます」
「宜しく、お嬢さん」
ヴェンゼくんと腕を組んで、カーテンのかかった壁へ近付いていった。カーテンをめくると、小さなアーチがあって、下がっていく階段がある。右側にだけ、壁に灯がついているが、数が少なくてうすぐらい。床は石で、冷たかった。
裸足でぺたぺたと歩く。ヴェンゼくんが溜め息を吐いた。「俺、だめだよね」
「え?」
「リーニは、ふたごに気にいられてる。かみなりはティーと楽しそうに喋ってるし、されきはマオに首ったけだ。俺はあぶれちゃった」
トイレについた。ヴェンゼくんは、待ってるよ、と、廊下の壁に背をつける。
用を足して、手を洗い、収納空間からとりだしたお水を飲む。これは、いい稼ぎ、なんだよな。俺のやってることって、ヴェンゼくん達の邪魔なんじゃ……。