異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
なにしたらいいか解らん。冒涜魔法に恢復があると思ったら大間違いだ。できないわけじゃないけど、大いなる犠牲を伴う。
……ていうか、そろそろ一時間くらい経つのでは?
案の定だった。リーニくんが身動ぎし、うーんと唸ったのだ。
俺は収納空間から紙をペンをとりだし、「殺人者」と書いて、ふたごの襟元に差し込んだ。きちんとこちらの世界の文字で書けていますように、リーニくんが文字を読めますように。
俺は、リーニくんが目を覚ます前に、とって返した。
スロープを駈け上がる。
息は切れたがとっととされきから色々と聴きださないといけない。ティーくんが起きていたらしにくい。それに、ティーくんがあいつらを解放してしまうかも。
廊下を走り、四つ辻を左。雪だるまの頭のほうの部屋へ着く。俺は一度通ったみちなら完璧に覚えられる。
されきとかみなりを拘束しておいた部屋に戻った。ほっとしたことに、ふたりとも大人しく正座している。
だが、ティーくんは居なかった。……目が覚めてどこかへ行ったのか?
とにかくされきに色々訊かなきゃ。
ふたりとも意識は戻っているようだ。しかし、魔王を単なる娼妓と思って殺そうとするとは、運が悪い。同情はしてやらないけど。
ごほんと咳払いした。ふたりともびくっとする。痛めつけたのはかみなりだけだから、されきはかみなりからなにか聴いたのだろうか?
「こんばんは、なかよしさんたち。おげんき?」
つくり声で云うと、かみなりはひっと息をのむ。俺は放り投げていた足枷の残骸を拾う。……片方ないな。
「時間がないの、生憎だけど。かたくるしいお返事は要らないから、楽にして頂戴」
「だ、誰なんだ? なあ、か、金ならある、ルジュアットの宝石や、すいしょう」
されきの肩口を殴った。「楽にしてとは云ったけど、楽しくお喋りしましょうとは云ってない。訊かれたことに答えなさい。無駄口を叩いたら後悔するよ」
ふたりはがたがた震えていた。
「お返事は?」
「はい!」
声が揃う。大変宜しい。
魔法をつかわれたら迷惑なのは変わりない。俺はされきの咽仏を擽った。「ひとつ訂正するね。後悔するかもしれないし、後悔する間もないかもしれない。解ったら、静かにお返事」
「……は、はい」
「解りました」
ふたりとも泣いているらしい。自分たちがどれほど愚かか、理解したろうか。
しなくてもいいし興味ねえな。裾野のルールに基づいて裁かれればいいよ。その前に教えてほしいことがあるだけ。
「余計なことを云ったりやったりしたら首を刎ねるよ。嘘だと思うなら試してみるのもいいかもね」
嘘だけどね。