異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
よし。
三人が見えなくなった。俺は、ランタンを仕舞い、かわりにあるブツをとりだす。
「……ダサッ」
ふたごがつけていた仮面だ。これはきつい。
まあ仕方ない。俺はそれを装着した。後ろで紐を結ぶと、案外安定する。いいお値段しそう。
フードを被っておいた。靴をはく。やるぞ。
俺はとことこと数歩戻り、壁へ手を当てた。「四散」
どん! と壁が爆発する。思っていたよりも高威力だった所為で俺は後ろへ吹っ飛ばされた。
四散:悪しき力にて任意のものへダメージを加える(効果:中)(魔法一覧より)
いってーんだけど。背中打った。どこが効果:中だよ。「うー」
ただ、成功だ。大きな音に、邸の人間がわらわらと集まってくる。それぞれ武器を持って。
逃げろ!
走り出した。
壁が畳一畳分くらい崩れているのに瞠目していた者達が、あっと叫んで俺を追ってくる。「くせもの!」
「追え!」
「旦那さまは無事か?!」
声的に、男女半々かな。
うわわわわ、あしはやすぎだろこいつら。
振り返る。威力弱めで。「禍殃」
先頭が転んだ。後ろのがまきこまれる。得した。
うー、息が苦しい。走るのなんかきらいだ。
いきどまりだ。
「四散」
威力調整は巧くいかず、またしても反動で吹っ飛ばされる。痛いー。
起き上がって、がれきを飛び越え、すすむ。なんだこの部屋? 本ばっかりじゃん。天国。
図書室かな。損なったら申し訳ないので、とっとと部屋を出よう。「四散」
よし巧くいったぞ。本を汚す訳にはいかないからな。
収納空間からチョコを出して、口へ放り込んだ。ファミリーパック買っておいてよかった。もとの世界に帰ったら、ガトーショコラザッハートルテ石畳チョコフォンダンショコラホットチョコ鳥のミルク!!
ばっと前に立ちはだかられた。おおぜい。
「もう逃げられんぞ」
「賊をとりおさえろ」
残念でした。
にんまりした。「偸利」
がくっ、がくっ、と、次々膝をつき、倒れてゆく。間を通る。はいはい失礼しますよ。
最後列のひとりは、がたがた震えて剣をとり落とした。俺が近付いていくと、わっと叫んで手をつきだす。
「烙印! ……烙印!」
ふたごがつかってたやつだな。でも、恐怖が勝ったのだろう、火花のひとつも散らない。
俺はその傍へ屈みこむ。多分二十代の、女性。髪は長い。軽鎧にドレス、マントと、戦士っぽい格好。
「はーい、おねえさん」
「ヒッ」
「ここの旦那さんはがすぎたよ。娼妓殺しは目に余る」
「こ、ころ、ここここここころし?」
「庇い立てすると全員で荒れ地送りかもな。なかよくお過ごし」
「な、な、なに云って」
偸利をつかって、気絶させた。「じゃ、お達者で」