異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
俺みたいだ。ちょっと親近感湧いた。
……って、サーダくんは本職の祇畏士だぞ。親近感なんて湧いてる場合か。
バルドさんが御者台へ座る。トゥアフェーノがぴっと鳴いた。「セロベルには連絡していないから、わたしから説明するよ」
「あ。すみません」
「マルロから詳しい報告は聴いたから」
バルドさんが手綱をとる。馬車が動き出した。「それにしても、無茶はよくないよ、マオ。命が幾らあっても足りない」
「ははは。すみません」
ほーじくんはバルドさんの後ろ姿を凝視している。どうかしたのと低声で訊けば、こちらを見、それからまたバルドさんを見る。
「髪」ほーじくんは唐突に喋った。「どうして短く?」
やっぱり気になるものなのだな。
バルドさんがふふっと笑った。聴こえていたらしい。
「たいしたことではありませんよ」
「……誰かの命乞い?」
いのちごい?
バルドさんはくすくすする。「ディファーズでは、そんな習慣がありましたね。でもこれは、不覚をとって切られてしまっただけですよ」
「あ……それは、災難」
「ええ、本当に」
命乞いって? と訊けば、ほーじくんは眠そうに説明してくれる。
要するに、願掛け……かな。修復者の加護は男性だと髪に宿るから、危険な場所へ行くひとへ、髪の毛をおまもりとして渡す習慣があるそう。
渡すのは二・三本で、いろんなひとのを撚り合わせたりもする。じゃあ一部だけ切ればいいじゃん。
でも、渡すのは一本だとしても、残りも切って、それを還元したほうがいいとされている。
解らんではないかなあ。髪に加護が宿る、って考えだもんね。残ってる髪に幸運を集約させる、みたいなことかなあ。
「あにさまが初めてに出る時、ととさまが髪を切っていたから」
それを、命乞い、というのか。……翻訳ミスな気がしないでもない。
因みに女性は? と訊いた。ほーじくんは黙って、綺麗に磨かれた歯を指差す。こわ!
「でも、一本渡すだけで、あとはそのままだよ」
充分痛いですしこわいです。
馬車が停まった。バルドさんが御者台を降り、トゥアフェーノをぺたぺた撫でる。なにやら云いきかせていた。
「まお」
ほーじくんは紳士的で、先に降りて俺に手を差し出す。俺は苦笑いでその手をとり、馬車を降りた。
「絶佳」
ほーじくんが呟くと、その体が淡く光りはじめる。バルドさんがおおっと驚いたらしい声をあげていた。
バルドさんが先に門を潜り、その後ろを、俺とほーじくんがついてゆく。中庭にまわったところで、厨房から笑い声が聴こえた。
……?
三人で顔を見合わせる。「……セロベル?」
バルドさんが先陣を切った。厨房へ這入って行く。俺達も続いた。
厨房では、セロベルさんがテーブルへ突っ伏して寝ていた。その髪を、サッディレくんが可愛いお団子にしている。その情況でも起きないセロベルさんに、グロッシェさん、アーレンセさん、そして何故か居るリエナさんまで笑っていた。