異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
――――絶望的に話がすれ違っている。
「あのー」
気まずさに耐えられず、見詰めあう(睨み合う?)ふたりに声をかけた。
ふたりともこちらを見る。「クッキー焼きたてなんだけど、ミューくん、食べない?」
ミューくんの目が点になった。ジーナちゃんは、口をちょっとだけ開け、しかしなにも云わない。
「あ」ミューくんははずかしそうに目を伏せ、袖口で目許を拭った。「すみません、ずかずかはいりこんで、大きい声出して」
「だいじょうぶだいじょうぶ。セロベルさんお茶いれてもらえますか?」
「あ。ああ解った」
セロベルさんが調理台の前に立った。リエナさんもその隣へ移動する。俺は、ミューくんとジーナちゃんを手招く。「座って」
椅子をひいてそう云うと、ふたりはちらっと目をあわせ、ゆっくり歩いてきた。
ふたりは並んで座る。「あの」
「大丈夫だからね。クッキー何枚食べる?」
「え」
「沢山食べるよね、ジーナちゃんクッキー好きだもん。食べ放題だから遠慮はなしだよ」
おしゃれながらすの鉢を出し(この前市場で買った)、程よく冷めたクッキーをざらざらと流し込む。ついでに、お茶っ葉いりのクッキー、おからクッキー、スパイスクッキーなどもおまけした。本来俺のおやつだが、背に腹はかえられん。もめごとはおなかが充たされていれば解決すると信じているからな!
「マオさん?」
「セロベルさん、お茶は濃く煮出して、バターをいれて。お砂糖もたっぷり」
「ああ」
「リエナさん大き目のお皿とってもらえますか? ありがと」
リエナさんが持って来てくれたお皿にペカンパイをのせた。テーブルへ置いて、ミューくん達へ笑みかける。「じゃ、これ切ってもらえるかな」
「あ、はい」
ミューくんが素直に頷いて、ペカンパイを切り始めた。ジーナちゃんは背中をまっすぐ伸ばして座ったまま、動かない。
「ジーナちゃん、クッキー全部食べちゃってもいいからね」
云いおいて調理台の前へ立つ。お昼の仕込みがあるのだ。えーと……手を抜こう。ぎゅうぎゅう焼きだ。
バットにお野菜やベーコンを詰め、お塩とこしょう、植物油をかける。それに、コリアンダーとタイムを少し。オーブンのなかのクッキーは丁度焼けていたからとりだして、薪を数本足し、バットを滑り込ませる。重たいからリエナさんにやってもらった。体力!