異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
セロベルさんに掴まって、なんとか下まで降りた。たけえ。
降り立ったところは、ごつごつした大きな石が転がっている、川原だった。かすかに滝の音が聴こえる。
ヨーくんが四辺をうかがった。「西に居ます」
「マオ、向こうに大木がある。その木には魔物は寄りつかないし、にはいれば魔物に見付からない。俺達とはぐれたら逃げこめ」
「はい」
セロベルさんは頷いて、ヨーくんへ云う。
「ヨー、俺の援護な。マルロはマオをまもれ」
「諒解しました」
「りょーかい! ですっ」
セロベルさんが剣を抜いて、歩き出した。そっと。
魔物にばれないよう、ゆっくり静かに。
俺達は三十分くらいかけて移動し、薮のなかへ這入った。ヨーくんの緊張が解れたのが解る。セロベルさんが振り向きもせず云う。「ヨー、気ィ抜くな、ばか」
「はい」ヨーくんが居住まいをただす。「すみません」
薮を抜ける。滝の音がどんどん近付いていた。川原だが、先程より石は小さい。
セロベルさんが右手を示す。
「あれだ。危なくなったら逃げろ。夜が明けたらこの辺りは安全だ」
巨木があった。楠っぽい。覚えておこう。
木を右手に見つつ、まだまだ歩く。と、目の前になにかが飛び出した。セロベルさんが予備動作なしで切り伏せる。「……犬か」
どう見ても巨大な狼だが。
セロベルさんは剣を払って血を落とし、巨大狼を蹴ってのける。狼から、黒っぽいもやが滲みだしていた。
俺は、セロベルさんとヨーくんに小走りでついてゆく。「あれ、どうするんですか」
「ア?」
「ま。ついてるんでしょ。放っておいていいんですか?」
死体? からにじみだしていたし、放っておいたら害がありそうだ。
セロベルさんは肩越しにこちらを見遣り、すぐに前方を向く。
「どうしようもねえだろうが。祇畏士しか滅却は出来ねえ」
「あ……そっか」
「放っときゃ、流れて消える。それがまた別の場所で魔物になるんだろうが、どうしようもないもんはどうしようもない」
ばかなことを云ってしまったようだ。俺は首をすくめる。
その後も、二匹、巨大狼が出てきて、セロベルさんとヨーくんはそれをすばやく正確に仕留めた。
滝の姿が見える頃には、耳を聾するような音に俺は顔をしかめていた。高低差はあまりないなんて嘘じゃないか。幅もひろいし。
柱状節理、だっけ。溶岩が流れて云々。そういう地形だった。半月の光が水面に反射してぎらぎらしている。ネコノツメをとる為には、たきつぼにはいらないといけない。