異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
セロベルさんは釈然としないふうだったが、サッディレくんが出てきたので話は中断した。
というか、サッディレくんに説明をしないといけないと考えたみたい。という訳で俺は解放された。傍で聴いてたけど。
「さっきの、なんですか」
サッディレくんはややこしい前置きやらはなしで切り出した。セロベルさんも率直に返す。
「借金とり」
「……は?」
「四月の雨亭は借金がある。最初に説明したろ」
「きいたけど、従業員にいきなり魔法で攻撃してくるような相手に金を借りてるとは聴いてないっすよ。店やってたら多少の借金なんてめずらしくもないし」
「そうだな」
セロベルさんはサッディレくんへ、深々と頭を下げた。サッディレくんは口をぽかんと開ける。「詳しい説明をしていなくて悪かった。この通りだ」
「いや……そうじゃないっすよね? 幾らここが金を借りてるからって、ああいうことは、それこそ警邏隊に云うべきなんじゃないですか。アーレンセ、怪我したんだから」
サッディレくんの正論に、セロベルさんは小さく頷いた。しかし、頭を振る。
「すまん。俺に免じて、勘弁してくれ。次、あいつらが来た時は、お前らは対応しなくていい」
「でも……」
サッディレくんは不快そうに、目を逸らした。
「……そうっすね。アーレンセが魔法で転ばされたって証拠がない。警邏隊は動かない」
そういうものなのか。魔法で悪さし放題なのでは?
と思ったが、おそらく軽微な犯罪に限っての話だろう。それこそ、威力の小さな魔法で転ばせるとか。それ以上は「裁定者」がでてきそうだもの。
サッディレくんは口を尖らせて、なにを思ったのかセロベルさんに飛び付いた。は?
サッディレくんがセロベルさんの頭をぐしぐしと乱暴に撫でる。俺、ぽかーん。セロベルさんは喚いていた。「さっでぃれ?!」
「これで悪運は去ったっすよ!」
ぴょい、と飛び降りて、サッディレくんはいつものようににっこりした。「アーレンセに握手してもらった手で触ったから、セロベルさんの髪にも幸運が宿る筈です。だから、またあいつらが舐めた真似したら、俺が溺れさせてやるっす」
「……お前」
「あ、すんません、髪ぐちゃぐちゃにしちゃった」ぺろっとふざけた顔で舌を出す。「マオに編んでもらえば?」
サッディレくんはにんまりして、厨房へと取って返した。セロベルさんは赤くなっている。「違うからな! サッディレ!」
何が違うんだろう?