異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
朝食のお膳を仕上げる。リッターくんと同じ、ブリニ、スープ、ジャムとバター、バター焼きだ。サッディレくんの機嫌は悪かったが、頼んでおいたのでたまにリッターくんの様子を知らせてくれた。ゆっくりよく噛んで食べているらしい。素直なのかなんなのか、まじでよく解らん子である。
ていうか、何故断食してたし。その状態で俺の前にあらわれた意味も解らん。でも、低血糖は辛いからな。こういう時は助け合いだ。
ブリニを焼きながら考えていると、リエナさんが木箱を運んできた。「おはよう」
「あ、おはようございます。いつもありがとうございます」
リエナさんはちょっとぎこちなく微笑んで、木箱を置いた。なかにはたまごとベーコンがぎっしりだ。
「マオー」サッディレくんがアーチから戻ってきた。「クッキー足りない。あと、あいつ寝そうになってる」
「ありゃ、ほんとにどうしたんだろリッターくん」
様子を見に行こうとするが、サッディレくんが笑顔で立ちはだかって通してくれない。「サッディレくん」
「これ以上気を遣わなくていいって」
「でも、昨夜……」
もしかしたらリッターくんのかくれんぼの才能が突然花開いて、賭場の近くに潜んでいたのかもしれない。その結果疲れているのかも、と思ったのだが、口を噤んだ。内証なんだった。
サッディレくんが眉根を寄せる。なにか疑うような表情だ。「昨夜、なに?」
「なんでもっ。あ、そうだ」
リエナさんが小首を傾げている。ベッツィさんとアーレンセさんでなにやら説明していた。
オーブンに薪を放り込み、アーレンセさんに頼んで燃やしてもらった。よし。
たまごをボウルに割ってよくまぜる。そこへざらめとミルク、溶かしたバターをいる。茶碗蒸しもなんだけど、たまごが多いとすがはいりやすい気がする。ヴァニラビーンズで香りをつけて、小さな器へ注いだら、干しあんずをふたつづついれる。熱湯をはったバットへ並べてオーブンへ。
焼くあいだに、手鍋にお砂糖とお水をいれて、まぜすぎないようにして熱し、香ばしい香りをつける。色が丁度よくなったらお水を差して、カラメルの完成。できあがりに上からかけるので、かなりゆるめにした。
朝食のお膳を仕上げながらそれをやっていると、サッディレくんがどんどん不機嫌になっている。
「……なに、それ」
「ああ、おかし。柔らかくてあったかいものなら、リッターくん食べられるだろうなって。できたっぽい」
扉を開け、バットをとりだす。次のものをいれた。んー、いい香り。干しあんずいりの焼きプリン。カラメルでお化粧したら完成だ。「ね、サッディレくん、これ持っていってあげて」
「あいつ、何者?」
「えーと」言葉を選んだ。「……秘密」
失敗だったらしい。サッディレくんは渋面になって、乱暴にワゴンを押していった。