異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
エプロンはおおまかに、腰から下を覆うタイプのもの、上半身も防護するタイプのものの二種類。
更に、腰から下のは、長さや覆う範囲がさまざまだった。リエナさんは太腿くらいまでを、ぐるっと一周覆うタイプをよくつけているが、グロッシェさんは膝くらいまでを前側だけ覆うタイプをつけている。
ジーナちゃんは、形のバリエーションが少ない、上半身もまもってくれるタイプを気にいったらしかった。所謂前掛けと云うやつだ。両肩に紐をひっかけて、それが後ろで交差して本体にくっついている。ただ、もとの世界と決定的に違うところがあった。腰部分は紐ではなく、ベルトでおさえるのだ。布製だが、後ろで紐を結ぶのに慣れた身からすると戸惑う。
ジーナちゃんは、シンプルな生成りのエプロンを取り上げ、矯めつ眇めつした。ベルトは軒先にぶらさがっていて、好きなものを組み合わせるのだ。「それ、気にいった?」
「ええ。おばあさまがつけてらしたのに似ているわ。ディファーズでも南の格好よ」
「へえ……」
そちらの民族衣装なんだろうか?
ジーナちゃんはベルトを数本手にとって、強度をたしかめていた。店主がどら声を出す。「お嬢さん、うちのはきちんと結んでつくってるから、丈夫だぜ。茨の冠を通しても千切れたりしねえよ」
ああ、そういうのを気にしていたのか。だからベルトなのかな?通しておく為に。
ジーナちゃんは、生成りのエプロンと、同じく生成りのベルトを選んだ。
「マオも」
「え?」
「服が汚れてしまうのを防ぐのでしょ? 必要だわ」
それはそうだ。俺も選ぶことにした。
なんだか異質なものを見付けてしまった。素材は綿だと思う。色は、やわらかい黄色。ひよこみたいな色だ。それは、ほかのものと少しだけ形状が違った。
肩のところ。肩紐を、本体についた大きなぼたんで留めてある。後ろには横に一本布があって、そこに肩紐はくっついていた。そして、腰のところに紐がついている。
ぼたん。この世界ではあまり見ないものだ。セロベルさんの髪飾りのなかに、ぼたんをぶら下げてあるものがあったけれど……。
これってもしかして、もとの世界となにか関係ある?
「それは頭を通せば着れるぜ。腰は前でも後ろでも好きに結べばいい」
着方が解らず迷っていると思われたらしく、店主が云った。「荒れ地ふうだ。めずらしいだろ」
荒れ地ふう、か。やっぱりもとの世界と関係があった。
結局、俺はそれを買うことにした。単純に、懐かしかったのだ。偶然にも、小学生の時初めて買ったエプロンに、そいつは似ていた。