異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
「職業加護の追加?」
俺の言葉に、ミューくんは小さく頷く。
廟から、四月の雨亭へと向かっているところだ。ミューくんには訪問の意図を説明し、承諾してもらえた。
で、お喋りしながら歩いている、という訳。
「例えば、護衛士なら徐々に恢復とか、護衛魔導士なら状態異常軽減とか、ありますよね。職業加護って」
「うん」
「そう云うのは、その職業になったら確実にもらえるものなんです。でも、なかには、その職業になってから等級を増やすなりしないと手にはいらないものもある」
「へえ~」
ゲームなんかでも、レベルが上がると新しいスキルをもらえたりするもんね。そういうこともあるんだ。
感心する俺に、ミューくんはふふっと笑う。「と云っても、追加されるものはたいした性能じゃないことがほとんどですよ。癒し手の場合、魔力徐々に恢復です。それの為にやってることであって、俺自身がいいやつって訳じゃないんです」
それの為に、というのは、廟での診療のことだ。凄いね、偉いね、と誉めたら、ミューくんが苦笑いで説明してくれたのである。
……うん?
「あれ、でも……」
言葉をさがした。「……えっと、でもミューくんって、まだ癒し手じゃないよね? それって意味あるの?」
俺の思い出では、ゲームなんかだと、ジョブスキルはそのジョブをとってからでないとスキルポイントがはいらない、みたいなのだった気がする。ミューくんは癒し手にはなっていないし、意味がないのでは。
ミューくんはくすっとした。
「ジーナなら、あなたって変、って云ってるところですね」
??
ある職業になると宣言した時、パラメータの変化には幾つかのパターンがある。
一番多いのは、職業加護によって、能力値が増減すること。基本的には(多寡はともかくとして)増えるが、なかには「体力大幅強化、ただし魔力大幅弱化」などのデメリットのある職業加護もあるのだそう。装備でもそういうのあったっけな。
また、一部の職では、レベルがリセットされる。しかし、体力や魔力が初期値に戻ることはない。それでも、レベルアップに伴って増えた分から、体力なら6から7割、魔力も5割くらいは減る。
めずらしいと、持っている特殊能力と、職業加護が統合され、全く別のスキルになる場合もある。それは稀なことで、今まで数種類しか、特殊能力と職業加護の組み合わせパターンは解っていない。ちなみに、統合後は特殊能力欄に表記されるらしい。
そして、癒し手を含めた数十種類の職業では、宣言した瞬間職業加護が追加されることがある。宣言前の行動が、経験値として累積されているのだ。
癒し手の場合、職業加護の追加条件は、恢復魔法をつかうこと、と考えられている。実際、癒し手になってからまったく戦闘をせず、ひたすら怪我や風邪を治し続けただけで、職業加護が追加されたひとも居る。