異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
ユラちゃんは貝貨を全部置いていく気らしかったが、お代の分をもらって残りは返した。またしても不満げに口を尖らしている。「これくらい端金だわ。うけとりなさいよ」
「端金なら持って帰るのもたいした手間じゃないでしょう」
「口が減らないわね……」
ユラちゃんはそう云って、一瞬微笑み、しかし表情を険しくする。くるっとこちらへ背を向け、ずんずん歩いて行く。「ごちそうさま。まあまあだったわ」
「またどうぞ」
侍女はじめ、お付きのひと達がすーっとユラちゃんへついていく。侍女のひとりが貝貨の残りを布に包み、俺へお辞儀してから出て行った。
ユラちゃん達がいなくなると、店が一気に淋しくなった。俺はふうと息を吐いて、もらった貝貨をカウンタへ届ける。サッディレくんがぐでーっとしていた。「おつかれーっす……」
「うん?あ、これお代ね。じゃあ俺は、夕ご飯の仕込みがあるから」
厨房へ戻ると、ジーナちゃんが今にもユラちゃんを追いかけて斬り掛かりそうな感じで立っていた。
「あの、……ああ、もう」
言葉にならないようだ。俺はジーナちゃんを椅子へ座らせ、割れてしまって売りものにならないクッキーをテーブルへ出す。「どうぞ」
「……あの子、嫌いだわ」
ジーナちゃんはクッキーをかじる。「わがままで、好き放題やって。親はなにをしてるのかしら」
わたしは、となにか云いかけて、ジーナちゃんは口を噤んだ。ジーナちゃんは、親の干渉が激しいし、決められたことを忠実にこなそうとしている。ユラちゃんの自由奔放に見える振る舞いが、羨ましくもあるのだろう。
夕食の準備をしなくては。
折角おいしいじゃがいもがあるのだ。定番の、肉じゃがをつくろう。
牛肉は厚めにスライスして一口大に。櫛形に切ったたまねぎ・ねぶかの青いところ・乱切りの人参と一緒にお鍋で炒める。たまねぎがくたっとしたら、皮付きのまま大きめに切ったじゃがいもを投入。じゃがいもに油がまわるくらい炒めたら、お水をいれて蓋をし、弱火で煮込む。だしでもいいんだけど、お野菜の風味を生かしたいので今日はお水。じゃがいもが主役だし。
じゃがいもに火が通ったら、蓋をとって水分をちょっととばす。この行程をやっておくと、汁っぽくて味がうすいってことはなくなる……と思う。
味付けはお醤油。たまねぎと人参いっぱいで甘ーいので、味見をしてからお砂糖をいれる。でないとべたべた甘い煮物になってしまう(それはそれでおいしいんだけど)。今回は、お砂糖なしでも極甘だった。じゃがいも効果かな?