異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
へえー。
リエナさんはトレイをワゴンへ乗せる。
「おばさまの云うとおりで、まんなかより少し南辺りでぱきっと分かれるのよ。でも都は都の形式があって、北部系より豪華で、南部系みたいに農園がついているのですって」
「ディファーズは、土地が広いから……建物も、立派なものが多いとか」
「へえー……」
この辺りも相当立派な建物ばかりだと思うのだが、それより立派なのかな。ちょっと見てみたいかも。
サッディレくんがワゴンを運んでいった。リエナさんは盛り付けをしながら、小首を傾げる。「なんの話だったかしら?……ああ、人攫いのことよね」
「ああ、そうでしたっけ」
「うん。あれって、廟で知り合ったひとがうちに買いものに来てくれてるんだけどね?南部での被害が凄くて、幾つかの領では自警団をつくったりしてるらしいの」
そこまですると云うことは、随分被害が出ているのだな。
俺は頷く。「まあ、自衛策はそれくらいしかないですよね」
「そうなのよね。外出しないわけにもいかないし、昼間だろうと夜だろうと危険らしいから。でも、その自警団が解散させられた領もあるのよ」
解散?
俺は手を停める。
「どうしてですか?せっかく……」
「それよそれ。その、知り合いの話ではね、解散じゃなくって、捕吏の指揮下にはいるって云うのかしら、つまり自由に動くな、お上の指示に従えってことなんだけど、実質解散なのよ。ほとんどの活動に待ったがかかったらしいから」
なんだかおかしな話だ。それじゃあなんの意味もないのでは。
リエナさんはトレイにお皿を乗せる。「そのひと、ディファーズ北部系なんだけど、旦那さんは南部系でね。結婚してからは南部系の廟へ通ってるの。廟ではその話で持ちきりなんですって。自警団って云っても、重装備でうろついたりはしないで、まあ、警邏よね、するのは。ちょっとした武器くらいは持ってるけれど、自衛にしかつかわないって決めてたらしくて。怪しい馬車があったら捕吏を呼んだり、それくらいよ、やるのは。あとは、いなくなった娘さんを捜したりしてたらしいわ。それをやめろって、おかしな話じゃない?」
おかしい。俺は頷く。
リエナさんは口を尖らせた。「娘さんを血眼になって捜してる親や、姉妹を捜してるひとも、勝手な行動は慎むようにって云われたそうよ。……その、自警団を解散同様にした領のひとつが、マイファレット領なのよね」