異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
貴族云々の話をややこしくしているのが、この魔力だ。
ロアは、かつての王国が南方侵略の為に派遣した部隊が、王国を裏切って建国した。その兵士達は、王国からすれば魔力の乏しいひと達……なのだが、先住民からすれば充分な魔力を持っていたのだ。
で、彼らはそもそも王国民で、ロア建国時、王国流に色々なことを決めていった。単純に、それしかやりかたを知らなかったのだろう。
そこに、貴族制度、もはいっているのだ。そして、王国にならい、戦闘も想定して、魔力の高さも爵位を決める基準のひとつに組み込まれていた。
建国時の混乱や、戦後のあれやこれやにかたがつくと、そこがネックになった。魔力の乏しさを理由に人間にカウントされず、攻め込まれた先住民からすれば、(基準のひとつとはいえ)魔力の高さをもとに選ばれた者が広い土地をもらい、政治的な発言力がある、というのは、納得がいかなかったのだ。というか、いつまた魔力なしが迫害されるかと、こわかった。
そこで、先住民は代々まもってきた土地に、貴族と云う概念を持ち込まなかった。先住民独自の階級を、貴族に置き換えることも、一部の先住民がやっただけだ。
友好関係を結んでいる以上、貴族が来れば相応の対応はするけれど、貴族だからではなくロア建国に功があったから、もしくは個人的に助けてもらったり親しいから、が理由。だから建国から千年も経った今、先住民は貴族に対してさほどの敬意は払わないし、優遇する気もさらさらない。なかにはめちゃくちゃ厳しく入植者との交流を制限している部族もあって、魔力の高い子が生まれたらそうそうに捨てられる場合もある。魔力の高い人間は自分達を下に見ていて、殺しに来る、という恐怖だけははっきり残っているのだ。
「父は、貴族であることに誇りを持っているんです」
サキくんは目を伏せる。「うちは還元士の多い家系で。還元は、魔法には括られませんから、魔力の多寡が影響しません。先住民のかた達にも、還元士の家系は多くあって、各部族で尊敬されているんです」
「あ、そっか。魔力はつかわないんだっけ」
「はい。偉大な還元士も、先住民には多く居て、父はそれをいやがるんです。先住民よりも還元の腕で劣る上に、貴族であることで先住民には蔑ろにされる、と」
サキくんは溜め息を吐いていた。
「領地が先住民の土地と隣接しているので、頻繁にもめるんですよ。そういう時父はいうんです。貴族はもっときちんと扱われるべきだと」