異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
ジーナちゃんはおいしいと云ってくれたし、レアディさん達も喜んでくれた。
ルッタさんからパスタを買い、エウゼくんのことをちょっとお喋りして(井で元気にしているそう。友達もできたって)、俺はワゴンを押して食堂へ這入る。観光案内効果は素晴らしい。
「あ」にっこりした。「おはよ、サキくん」
「おはようございます」
サキくんとリオちゃんだ。ふたりでなかよく同じテーブルについて、テーブルの上で手を握りあっている。サキくんはともかくとして、リオちゃんはサキくんのこと好きなのでは?
トレイをテーブルへ置く。リオちゃんが両手を叩いて喜んだ。「とってもおいしそうね!」
「そうだね。マオさん、戴きます」
「どうぞ。今朝はふたりなんだね」
リオちゃんが牛肉を切りながら云った。
「うふふ、リオ達約束をとりつけたのよ。ここなら警邏隊さんも居て安全だし、ふたりで来てもいいのですって」
「いい加減、家の者も疲れてるんです」
大人が居なくても堂々と出歩いていることにリオちゃんは誇らしげだが、サキくんは軽く苦笑している。「相当長いことレントに居ますから。こうひとが多いと、気疲れしてしまって」
トレイを配って、汚れた食器を回収して厨房へ戻る。グロッシェさんがひきとってくれた。レアディさん達はもう帰っていて、ジーナちゃんはセロベルさんに渡すためにお茶を淹れている。
「ぜりー、どうだった?」
「とってもおいしかったわ」
ジーナちゃんはティーポットをふたつ持つ。「セロベルに渡してくる」
俺は頷いて、ゼリーの追加をつくりにかかる。野いちごはまだまだ沢山あるから、いっぱいつくっておくつもりだ。
「そうだ、ジーナちゃん」振り返った。「昨日の話だけど」
サキくん来てるよ、といおうとしたのだが、ジーナちゃんはアーチの近くでかたまっていた。
……?
俺はジーナちゃんへ歩み寄る。「ジーナちゃん?」
マイファレット嬢も、アデイールさんも、チェルノーラ夫人も、ジーナちゃんがかたまってしまうようなひとは来ていない筈だけれど。
ジーナちゃんはわずかに口を開けて、食堂のなかを見ていた。
「どうしたの?」
「……マオ」
ジーナちゃんは一点を見ている。「わたし、ミューと結婚したくないのかも」
??
ジーナちゃんの視線を辿る。……え?まじで?
ジーナちゃんは、サキくんのテーブルを見詰めていた。見詰めているというか、見蕩れている。
サキくんはリオちゃんと喋っている。笑顔が眩しい。遠くからでも美少年なのはかわらない。
えっと……これって……そういうこと?