異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
おなかいっぱい食べてしまうと、眠くなってきた。お客さんが居なくなったら仮眠とろう。昨夜は長かったから……。
リエナさんを交代した。セロベルさんと隣り合って、楽しそうにお喋りしている。ジーナちゃんとサキくんも、あんな感じになれたらいいのに。
牛肉は沢山ゆがいたので、足りる。マッシュポテトとスープもある。ゼリーの追加分はさっきつくった。人参とほうれん草が足りてない。発酵させたパンもなくなってしまったので、発酵させていないパンを出すしかない。
人参を刻むのは、ジーナちゃんも手伝ってくれた。黙々とやる。ジーナちゃんは表情が乏しいが、多分考えごとをしている、……ように見える。
ラペとソテーをつくり、小鉢やお皿へのせていると、ジーナちゃんが低声で云った。「マオ?」
「うん」
「わたし……努力はしてみる」
お?
ジーナちゃんを見る。「ほんとに?」
「ええ。でも……諦める為よ。無理だと思うから」
そんなことないんだよ!サキくんも同じ気持ち!
とは云えないので、俺はにやにやして激しく頷いた。頑張ってね、と云っておく。ジーナちゃんははずかしそうに顔を背けた。
眠いけど、ジーナちゃんの勇姿を見届けねばならない。
俺はそわそわしていた。ジーナちゃんよりもだ。ジーナちゃんはお茶の道具をワゴンへのせて、目を伏せて集中している様子。あー、もしかして、ジーナちゃんがお茶を配ったときがあったから、サキくんそれで、俺がジーナちゃんを知ってるって?
ジーナちゃんはこちらへ目配せする。俺は、頑張って、という気持ちを込めて頷いた。ジーナちゃんがワゴンを押していく。
俺はアーチからそっと覗き見る。セロベルさんが呆れたような声を出す。「なにしてんだ、マオ。また旨そうなもんでも見付けたのか」
「そんなところです」
適当に返した。ジーナちゃんはお茶を配りながら、徐々にサキくんのテーブルへ近付いている。
サキくんが、あっという顔をした。それから手をあげる。お茶のおかわりを下さい、と云う意味だ。
ジーナちゃんが一拍おいて、そちらへ行った。サキくんが笑みを浮かべ、なにか喋る。リオちゃんもとびきりの笑顔だ。ただし、リオちゃんはサキくんの手をしっかり握っていた。
三人はちょっと言葉を交わし、ジーナちゃんが別のテーブルへ移動する。
リオちゃんはサキくんへ顔を近付けて、ひそひそ話。サキくんは微笑んでいたが、眉がちょっと困っている。ジーナちゃんに誤解されたくないのだろう。
リオちゃん、いい子なんだけど、ちょっと空気が読めないからなあ。いやもしかして、可愛い子がサキちゃんに近付いてきたからガード!なのかもしれない。リオちゃん、サキくんを好きっぽいから。