異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
トレイを運んでいくと、ライティエさんは瞬く間に炊き込みご飯を食べた。「おいしいい」
「生き返るですう」
「人心地がついたよ」
「大変だったんですね、昨夜」
三人は頷く。
三人とも、レント近辺の魔物を討伐してきたそうだ。警邏隊は毎日討伐に出ているけれど、今回は魔物の死骸を運搬するのに人手を割いているので、いつもより人数が少ない。しかも、三人は昨夜から不眠不休で戦いっぱなし。警邏隊ではない傭兵達が助っ人に来てくれたのが明けがたなので、マルロさんは三回くらい死ぬかと思ったそうだ。
そして、お昼前にレントへ戻っても、三人は休めなかった。協会本部へ戻っての報告があるからだ。ちなみに、緊急招集された傭兵達は、無償で働いているので、報告義務はない。リストは制作されているから、査定には影響ある。
書類をつくって、協会本部にあるお風呂で汚れを落とし、ライティエさんの提案で四月の雨亭へ戻ってきたのだそう。
「こんなに疲れたんだもん。すっごくおいしいもの食べなくちゃ」
それは凄く解る。俺がチョコケーキを要求していたのと同じ理屈だな。
ライティエさんは何杯目かの炊き込みご飯をもぐもぐしている。律儀に銀貨を積み上げてくれているのでありがたい。……七杯目か。
「こっちもおいしいですう。らっかせいのほくほく、マルロ好きですう」
「マオ、お茶もう一杯頂戴」
「あ、はい」
厨房でジーナちゃんからティーポットをうけとる。「マオ、おなかが空いてるのじゃない?かわりましょうか」
「まだ大丈夫だよ」
かまどを見遣る。俺も山羊の炊き込みご飯を食べたかったので、追加をつくっているのだ。ライティエさんが食べ尽くしてしまいそうだから。
じゅうじゅういったら火から外してね、とジーナちゃんに云って、食堂へ戻る。メイラさんのマグへお茶を注いだ。「セロベルさんは……?」
「ああ、あいつは、なんてったっけ?とにかく、近くの村に行ってるよ。ターツァと、バルドが一緒。後は傭兵等級2の連中」
「護衛依頼から戻ったばかりでかりだされた子達、可哀相よねえ-」
からになったライティエさんのマグにもお茶を注いだ。「ほら、荒れ地のほうから戻ってきたとか、ロアから帰ったばっかりとか、居たでしょ?」
「ああ、居るね」
「癒し手さん達も大変ですよお」
「かえが効かないからねえ。癒し手が少ないと困るのに、若い子は癒し手になりたがらないから-」
ライティエさんは頬をふくらす。「魔物を倒すのはかっこいいかもしれないけれど、癒し手が居ないと連戦が辛いのにね」