異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
山羊の炊き込みご飯はなんとか残ったので、まかないにまわした。リエナさんの好物でもあるらしく、大喜びされた。
グロッシェさんは苦手だそうなので(「あぶらっこくって……」)、別メニューを用意してある。千切りの人参・千切ったレタスを甘辛いたれで和え、かために焼いたオムレツと一緒に発酵させたパンにはさんだもの。キャベツの千切り+フレンチドレッシング+かりかりベーコンのもつくった。どっちにしても、動物性蛋白質は少なめ。グロッシェさんが苦手としているので。
いざ食べてみると、山羊の炊き込みご飯は相当おいしかった。山羊肉の匂いに抵抗がなければおいしいと思えるだろう。あと、あぶらっこいのが気にならなければ。おいしいんだけど、流石にあぶらが……骨からあぶらが染み出しているのだ。サローちゃん達もライティエさん達も、骨を割って髄をすすっていたので、あぶらっこいのが好きのかな。
リエナさんは豆の煮込みと山羊の炊き込みご飯をぱくぱく食べていたが、俺とジーナちゃん、ツァリアスさん達は早々に降参した。
はちみつ漬けのケーキを運んでいくと、歓声があがる。掌大に切り分けておいて欲しいとのことだったので、大きめのバットに切り分けたものを敷き詰め、はちみつをたっぷり注いである。匂いが甘い。
サローちゃんが、はちみつのしたたるケーキを食べて、幸せそうに目を細める。俺は甘いもの食べられるほうだが、これは無理だ。匂いがやばい。
しかしその匂いに惹かれたのか、ライティエさんからお呼びがかかった。「マオくん、わたしたちもあれ食べたい」
まじで?兵器みたいな甘さだと思うぜ?
一皿で銀貨3枚です、と云っても、ライティエさんは引かなかったので、三人分を予備のバットから取り分けて運んだ。
「いいよねえ、このお菓子。荒れ地近くの村で食べられるものなんだよね」
みたいっすね。
ライティエさんはぱくぱくとケーキを食べ、お匙ではちみつをすくって舐める。匂いが凄い。はちみつ屋さんで買った百花蜜だが、匂いが強いのだ。色も濃い。
メイラさんも平然とケーキを食べている。「そういや、また、荒れ地がひろがったらしいよ。泉がひとつ消えてなくなったって」
「そうなんですか?」
荒れ地と云えば、間近にダストくん達の村、ハーバラムさんの村がある。大丈夫なんだろうか。
マルロさんがはちみつを舐めつつ云った。
「荒れ地がひろがってるのもそうですけど、魔物が大きくなってるらしいですう。荒れ地に魔が強くこごってるんじゃないかって、祇畏士さま達が心配してらしたです」
「わたしらは安穏としてたけどサ」メイラさんは天井を仰ぐ。「前から相当経ってるし、荒れ地もひろがってきてて、次のやつが出てきたっておかしくないんだよね、魔王。今の情況で、対抗できるのかねえ」
「もしかしてその為かもね。格闘姫があらわれたの」
あらわれたかもでしょ、とくすくすするメイラさんに、ライティエさんもマルロさんも笑った。俺はへらへらしていた。多分簡単に制圧できると思うよ、魔王。