異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
なんだか居たたまれなくて、給仕はサッディレくんとアーレンセさんにまかせた。ツァリアスさんは、お客さんにシアイル貴族っぽいひとが居るので、厨房から出ない。ベッツィさんはお茶を淹れてくれた。
お客さんに朝食が行き渡り、まかないもつくり終えた(そして俺はおなかいっぱい食べた)ので、パウンドケーキを焼きながら本を読む。ツィークくんが来たらまたあげようと思っているのだ。そういえば、最初はツィークくんって云いづらかったけど、慣れたら発音できるようになった。……滑らかとは云いがたいけど。
パウンドケーキの生地を型に流し込んで、オーブンへ突っ込んでしまうと、オーブン近くに椅子を置いて座った。さて、どんなことが書いてあるかな。
一冊は、大体、ナジさん家で読んだ本と同じ。でも、判明している魔法の一覧表があるから助かる。ナジさん家で読んだ本にも書いてあったと思うけれど、斜め読みしたから綺麗さっぱり忘れている。
で、冒瀆魔法の一覧は、相変わらず空白なのな。名前すら解っていないのか、解っていても掲載できないのか、どちらなのだろう。
それに、複数の属性にまたがって魔法をつかえるのは普通みたいで、なんだかそれもかわっている気がする。ゲームなんかだと、得意属性不得意属性みたいなのがあって、得意なのはつかえるけど不得意なのはつかえない、とかじゃないか?で、大概、風↔土とか、火←水みたいに、対立してたり強弱があったりして、自分の得意なやつと対立してるのは不得意、とかじゃん。
なのに、熱魔法と水魔法って対立してないし、水魔法が熱魔法に強いって訳でもない。属性分布図みたいなのが描いてあったが、恩寵を頂点に、熱、水、風、大地、駆使が逆さ虹のように配置されている。そしてそのずっと下に魔力がぽつんとあった。冒瀆は無視。善悪に重きを置いて分類しているのだろうけれど、だったら熱とか大地とか細分化する意味ってあるの?……神さまが決めたことみたいだから、文句云っても仕方ないか。
もう一冊は、魔法をつかう時の心得の本だった。魔法系の職業向けみたい。「魔力の枯渇に注意しよう」「魔力薬は最低でも二本は持っておくべし」「還元士と仲好くなろう」「庇ってくれる戦士や魔導戦士に感謝を」「魔力の次に大切なもの、それは速度だ」……などなど。
魔法についての知識が増えるかはともかくとして、読んでいて面白かった。還元士と仲好くなれば、魔力が枯渇しそうで魔力恢復薬もない時に、還元で助けてくれるかもしれない、と云う理屈だ。魔導士は人間関係を円滑に保つことが大切、とも書いてあった。ユラちゃん……。