異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
「村の護衛って、投げ出して逃げたら、協会で問題にならないんですか?」
「なるよ」
ハーバラムさんはダストくんの腕をがっちり掴んだまま振り返る。
「マオならどうやってごまかす?」
「え……戦うのはこわいからそもそも護衛なんてできないし……でも、やらなきゃいけないなら、みんなで力をあわせてなんとか……」
答えになっていなかったが、ハーバラムさんはうっすら微笑んだ。
「マオはいいこだねえ。……答えは「はやめに逃げる」だよ。村人がみーんな死んじまえば、あまりに強い魔物故戦ったもののどうにもなりませんでした、で済むからね」
うわ。それは酷い。
「まあうちの村を見捨てたやつらは露呈して傭兵許可抹消になったけど。あいつらのせいで何人死んだか……」
ハーバラムさんは悔しそうに声を震わせた。「もっとまともな傭兵を雇えるだけの金があったらあんなことにならなかったんだ。だからわたしは稼いでるんだよ」
話をしながらだいぶ歩いていた。
ハーバラムさんが笑顔になった。「ごめんねえ、ぐちぐちと。さ、薬草を買い取ってくれる店だよ」
示されたほうを向く。……仰いだ。
立派な門があった。レントのちょっとしたお店は、大体こういう目につく大きな門を持っているらしい。
門をくぐる。木造っぽい古めかしい建物があった。
三階建てかな?両開きの扉があって、窓はあるのだがぴっちり閉てられていた。近寄ると、なんとなくお薬というか、ハーブとスパイス的な匂いが漂っている。
ハーバラムさんが扉を押し開けた。「ごめんください。メーデ、薬草持ってきたよ」
声をかけつつなかへ這入っていくハーバラムさんへ続く。
なかは、薬局みたいな感じだった。薬品棚(多分。壜や袋が並んでいる)が壁際にあって、お薬を調合してもらうお客さんが待つためだろう、長椅子がでんと置いてある。退屈しないようという配慮なのか、売りものなのか、背の低い本棚がカウンタの傍にちんまりと佇んでいた。カウンタの奥には百味箪笥が設置され、、梁部分には縄が掛けてあって、お薬の材料らしい葉っぱいや貝がら、枝が括りつけられている。
しわくちゃのおじいさんと、中学生くらいの女の子が、葉っぱをとるのをやめてこちらを向いた。
「おお、ハーバラム。よく来たな。灰色石か?」
「違うよ、チダメグサ。買い取ってくれるよねえ?」