異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
ぽかんとされた。三人全員に。
「え、なんか変です?だって、そうでしょ。セロベルさんは普通に給仕もしてるし、それでも繁昌してて、観光案内にものってるんですよ。充分認められますって。だって観光案内をつくってるひと達と、相当な数のお客さんがすでに認めてますもん」
「……でも」
「世間に名の知られる人物でしょ。教官じゃなくても大丈夫です」
「そうだけどよ」
「文字通りうけとるならそうですし、教官になれという意味だったと云われても抗弁したらいいと思います。丁度借金もなくなって、リエナさんやその家族に迷惑をかける心配はなくなりましたし。それくらいできないんですか?リエナさんの為に」
セロベルさんは口を噤み、目を伏せる。俺は云う。「それくらいのこともできないなら、どうぞ、諦めれば」
「マオ」
サッディレくんがなにか云おうとするのを遮って続ける。
「セロベルさんって結構見栄っ張りですよね。借金のことも自分ひとりでなんとかしようとしてたし。あの時もリエナさんは、グロッシェさんにご飯持ってきてくれたり、四月の雨亭のお手伝いしようかって云ってくれてましたよ。親御さんからなにも云われなかった訳ないですよね」
「それは……」
「セロベルさん、もっと堂々としたらいいのに。教官になれなかったのは、お父さんの看護の為でしょ。それを悪くとるひとは居ませんよ。リエナさんだってセロベルさんの優しさを解ってます」
残ったマカロニを全部お皿にいれて、ソースをかけた。セロベルさんは低く云う。「父さんのことがなくても、教官になれたかどうかは解らねえ」
「そうですね解りません。もしかしたらあっという間に教官になれてたかも。それは誰にも解らないんですよ。だったら、親でもなんでもいいわけにつかって、屁理屈こねて、どうにかしてリエナさんの気持ちに応えたらいいじゃないですか。失敗してはじをかくのがこわいんですか?」
「そういうことじゃない」
「セロベルさんはリエナさんを信用してないんですね」
「は?」
「だって、セロベルさんが耳持ちでも、四月の雨亭が借金塗れでも、セロベルさんが約束を破って下山しても、なにくれと気遣ってくれたんですよ。リエナさんは、ここからでもセロベルさんならひとかどの人物になれると思ってるんです。そのリエナさんの判断は間違いだって云うんですか」
セロベルさんは黙る。サッディレくんはぽかんとしてた。グロッシェさんは顔を俯けている。俺はフォークでマカロニを突き刺した。
「互いを信用できない夫婦なんて最低ですよ。リエナさんのことは諦めたほうがいいみたいですね」
「……お前に」
セロベルさんは息を吐いて、ちょっとだけ笑う。「お前に口で勝てる訳がないんだ。解ったよ。明日リエナに云う。約束破っちまったけど、結婚してくれって。リエナの両親は、屁理屈で云いくるめてみせる」
俺はにんまりして、マカロニを頬張った。