異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
「おはよおございますう」
いつも通り暢気な喋りかたのツィークくんは、中庭から顔を覗かせ、自分の背後を示す。「ライティエさんの食糧調達部隊です-。全員収納空間持ちなので、食べもの沢山用意してもらえませんか-?」
「はーい。任せてー」
つられて俺まで間延びした喋りになってしまった。すーぐ影響されちゃうな。
とりあえず、待っている間にどうぞと、テーブルへ促す。すでに、サッディレくんとベッツィさんが朝ご飯中。
ツィークくんと、傭兵三人が席に着いた。トレイを運ぶ。沢山つくって収納空間へいれておいたので、あったかいままだ。「おかわりしてね」
「ありがとうございますー」
ツィークくんは嬉しそうに云って、お匙をとる。まっさきにドライフルーツのヨーグルト和えから行っていた。それはね、前の晩にヨーグルトのつぼにドライフルーツぶちこんで掻きまぜて、ひと晩置いておいたものなんだよ。そうするとドライフルーツがしっとりやわらかくなって、ヨーグルトの水分はいい感じに減って、ちょっとしたお菓子みたいになるのだ。
俺は頷きながら調理台の前へ戻り、ライティエさん(+傭兵協会本部で働いているひと達)用の食べものを用意する。
小麦粉・そば粉・お水・たまごでつくった生地をうすく焼く。
あいびき肉と青唐辛子の輪切りを炒めて、甜麺醤・お味噌・すりごま・お醤油・お酢で味をつけたもの。お酢はほんの少しだけの隠し味。これと、葉物野菜をざっくり切って炒めたものを一緒に巻く。
厚めに切って、表面がかりっとするまで焼いたベーコンと、両面揚げ焼きにしたたまご。
ゆでたまごを刻んでお酢・お塩・こしょうで味をつけ、炒めた角切りのハム・ナスタチウムと和えたもの。
巻くのはツァリアスさんにも手伝ってもらった。やっぱり手際がいい。味見名目で、小さなのをひとつつくって食べる。べーこんえっぐうま。
完成品が積み上がってきた。傭兵のうちふたりが食事を終え、やってきて、それらを収納していく。サッディレくんとベッツィさんが食事を終え、アーレンセさんとグロッシェさんに席を譲る。
おいしそうだし、ツィークくんにも食べてもらおうと思って、三種類×よっつを運んでいった。「おなかいっぱいじゃなかったら、つぃーくくん達もどうぞ」
「ありがとうございます。……マオさん」
「うん?」
「ラッツァクの土地建物は、マオさんの所有ですのでー……報告しなきゃならないんですが」
頷く。ツィークくんはちょっと、云い淀んだ。それから低い声を出す。
「旧トーリュス邸と、旧シュトゥーグ邸の、裏庭に……ひとが埋まっていました」
ひと。
死体……って、ことか。はあ。またっすか。ええー。
土葬みたいな状態ってこと?それはなんの為に。
俺の疑問が解ったか、ツィークくんは付け加える。「証言に拠れば、耳持ちを借金のかたに連れてこいと云っても従わなかったから、脅しをかけるつもりで殺してしまった、と」