異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
サローちゃんは、十歳で入山した神童、だそう。普通入山ははやくて十四歳だとか。ほんとに神童だ。
「凄いですね」
「うん。魔力特優、職業は錬金術士。ここは裾野で一・二を争う薬工房なんだよ」
へー。
メーデさんは調剤士で、十代の頃入山していた。怪我の薬は、高額だけれど効果は天下一。シアイルやロアから偉いひとが買いに来ることもある。
サローちゃんの両親はどちらも調剤士で、今はドラクで工房を構えている。「サローちゃんはどうしてこっちへ?」
「じいちゃんのほうが腕がいいから」
びくっとする。
サローちゃんの差し出すざるへチダメグサを出した。「弟子にお茶淹れさせるから」
「あ、大丈夫です」
猫耳がぴくっとする。イタダキマスと云うと、サローちゃんは頷いて奥へ戻る。
五分もせず、二十代くらいの女のひとが、お茶とお菓子を運んできた。長椅子へ置いてぺこぺこお辞儀し、さーっと戻ってゆく。
あ、このお菓子旨い。ドライフルーツたっぷりで、パンとケーキの中間みたいなの。お茶は、烏龍茶っぽい。
お菓子もお茶も律義に三人分あった。ハーバラムさんがマグとお皿を持って外へ行く。ハーおじさんっ、と焦ったようなダストくんの声が聴こえた。
ハーバラムさんがにこにこで戻ってきた。ダストくんにお菓子を食べさせてあげたそう。照れてるダスト坊かわいーんだからー、と地団駄踏んでいた。
結局、チダメグサがなくなるまで、二時間半くらい。
奥から出てきたメーデさんは汗だくで、タオルでそれを拭う。「やー、いいものを持って来てくれた。助かったよぼっちゃん」
「いえ」
サローちゃんが本を手に戻ってきた。表紙を手ではたき、カウンタへ置く。
「これ持ってって」
「え?」
「劣化がはやい薬材をまとめてある。取ってきたら高く買い取るから。損な話じゃないでしょ」
はあ。そっすね。
とりあえず受け取った。……よく考えたら、収入源確保じゃん。採りに行くのは危険とかそういうおちだろうけど、無理そうなら行かなくてもいいし。
「引取りの目安価格も書いてあるから。うちがレントで一番良心的な値で引き取ってるからね」
ほう。めくってみる。
……たしかに高額だ。花一輪で貝貨三枚?
時期がもの凄く限られてるのな。で、荒れ地にしか生えない。うへえ。
そこまで高いものは数種類だった。草が一株銀貨十枚ってのもなかなかだが。ところで、チダメグサはいくらで買い取ってもらえるんだろう?
メーデさんが百味箪笥を開け、取り出したものをカウンタへ置いた。宝石箱みたいだ。開けると、貝貨が詰まっている。