異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
美少年はどんな格好でも美少年だな。サキくんちょっとアクセサリつけただけでなんていうか、なんていうかなあ。こう。気品?があるのがよく解るよね。ミューくんだってかっこいいし品があるんだけど、サキくんと並ぶとかすんじゃうな。
ふたりがお弁当を買いに来たお客さんへの対応をしてくれるとのことなので、俺もきがえに向かった。部屋に這入って、ちょっと派手目のチュニックやローブにかえる。ずぼんは白っぽいのにして、ブーツからサンダルに履きかえた。足許寒い。おしゃれは我慢というやつか。
髪はどうしようもないし、とりあえず腕輪や指環をつけておいた。これはヘリオトロープかなあ、こっちは珊瑚で、これはオパールっぽいし、ルチルクオーツに、琥珀……むむ。
きがえ終わったので外に出る。中庭では、ジーナちゃんとリッターくんがビミョーな距離で向かい合って立っていた。「わ、ジーナちゃん可愛いねえ!」
「……マオ」
振り向いたジーナちゃんは、胸下切り返しの、裾を引き摺る水色のドレスを着ていた。レースのフリルが沢山ついていて、それには水晶のビーズがあみこまれている。袖口や裾に施された金糸のぬいとりは、ミューくんのチュニックの模様とお揃い。袖は細くて、袖口には真珠がぐるりと飾られている。控えめな金糸のぬいとりがおしゃれな白いショールを羽織って、梳かしただけの髪に、白のベールを被っていた。ベールといっても派手なものではなく、大判のレースハンカチを被っているみたいに見えた。
リッターくんは、いつものくらい色合いの外套にずぼん、ブーツだけど、ピアスと髪飾りが増えていた。指環も沢山つけている。ただし、指環をつけているのは親指・人差し指・中指だけで、薬指と小指にはなにもつけていない。あと、佩玉っていうの?剣と一緒に腰に佩いてる。つるっと綺麗なネフライト。
「リッターくん、ちゃんと準備してたの?」
「式に参列するのだから、正装でなくばならない。持っていた」
えらいねえ、と誉めようとしたのだが、ジーナちゃんが鼻を鳴らした。
「だったら、剣をこれ見よがしに佩くのはおやめなさいな。はれの席に持ちこむものではないわ」
「これをひとときでも手放すつもりはない。何があるか解らないだろう」
「それはそうだけれど」ジーナちゃんはさっとスカートを手で払う。「ならわたしのようになさいと云っているの」
ジーナちゃんのドレスは、どれでも武器を隠せるようになっているみたいだ。さっすがあ。
リッターくんはめずらしく、かすかに困ったみたいな顔をした。剣を見下ろし、ぼそっと云う。「隠す場所がない」
よくも悪くも、素直なんだよね、この子。