異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
揚げパンにリメイクした干しいちじくパンは好評だったので、ジーナちゃんがかごに盛って持っていった。サキくんが豆の煮込みのお鍋を運んでくれる。チョコ、チョコくいたいよう。カカオ。
山羊の炊き込みご飯をつくったり、ケーキを焼いたりしているうちに、お茶の時間になった。お菓子の販売に立つのはミューくんサキくんだ。リッターくんは平然と手伝ってくれているが、ユラちゃんの護衛はいいのだろうか。
わけぎを切っていたリッターくんが顔を上げて、食堂のほうを見た。「りったーくん?」
「来た」
リッターくんは包丁をゆすぎ、わけぎを牛肉の塩ゆでにのせる。そのまま運んでいってくれた。来たってなにが、と思ったら、ユラちゃんだ。馬車の音と、ユラちゃんの甲走った声が聴こえてくる。「来てあげたわよ!」
ケーキの見張りをツァリアスさんに任せ、中庭へ出る。木綿地のドレスと毛織りのローブで着膨れしたユラちゃんが居た。左右と背後に侍女を配置して、胸を張っている。いかにもいいところのお嬢さまなユラちゃんに、近所のひと達がこそこそ話している。「セロベルの教え子かな」
「シアイルのご令嬢らしいぜ」
「へえ。ファバーシウス家の跡取りに、エンバーダート家のお嬢さま、シアイルのご令嬢か。セロベルも顔がひろいや」
ユラちゃんはセロベルさん達のところへ行って、なにやら言葉を交わし(リエナさんが楽しそうに、くすくすと笑っていた)、糸の巻き付いたつむを侍女達が介添人へ渡す。ユラちゃんはその後優雅にお辞儀してふたりから離れると、まっさきに揚げパンを確保してぱくつく。
「彼女、面白いわね」
「まったく」
ジーナちゃんとミューくんがくすくす笑っている。「彼女ほど貴族らしいひともめずらしいや」
ふたりの言葉に棘はない。ユラちゃんが根はいい子だと解ってくれたみたいだ。リッターくんもそうなんだよ。
「なによ、雁首揃えて」
揚げパンをもぐもぐしながら、ユラちゃんは、右、左、と目を動かす。「居ないのはリオだけじゃないのよ。あの子はなにをしてるの」
「ああ、謹慎中だよ。僕も関わってたってことで、暫く会えない」
「ま。ロアってそう云うの自由なんじゃないのね。意外だわ」
サキくんはははっと笑った。「どこも同じさ。階級や肩書きに振りまわされる。そういうものだろう?レフオーブル嬢」
「そうかもしれないけれど、退屈ね。……あんた達と無茶をやって、そう思ったわ」
ユラちゃんは一瞬への字口になる。
「入山したら、寮が別れるのよね」
ミューくんとサキくん、ジーナちゃんとリッターくんが目を合わせた。ミューくんとサキくんはちょっと淋しそうに目を伏せる。ジーナちゃんとリッターくんは、表情なく目を逸らす。
「つまんないわね」
ユラちゃんがこぼした。