異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
ユラちゃんは本当に泊まるつもりらしく、侍女達の部屋もお願いねと銀貨を積み上げた。俺は解らないので、部屋の用意はツァリアスさんとジーナちゃんに丸投げだ。
日中、ごちそうを沢山食べたので(山羊の脂はおいしいけれどとってもしつこい)、夜は簡単に、ぎゅうぎゅう焼きとパンにした。といっても、レアディさんとこの発酵させたパンだし、ぎゅうぎゅう焼きは新鮮なお野菜たっぷりだ。費用はさほどかかってないけど贅沢。
ご飯を食べて、欠伸をする受験生達を厨房から追い出し、ツァリアスさんと残りの業務をこなす。最近顔を合わせていなかった、夜巡回の警邏隊にも、久々にお弁当を手渡した。このところ、ベッツィさんかグロッシェさんに対応してもらってたからな。
帳簿付けもすんで、式のお食事にかかった費用を羊皮紙に書きつける作業を終え、漸くと寝る準備にかかる。サキくんがわかしてくれたらしいお風呂につかって、ついでに歯を磨き、崩潰で髪を整えたりした。こういう時は便利なんだよなあー。
湯冷めしないよう、ローブを二重に羽織って部屋へ行く。窓を開けてちょっと空気をいれかえ、きちんと閉めてから寝た。
がらがらがらがらと凄まじい音がして飛び起きる。
雷か、と怯えたが、すぐに正体が解った。鐘だ。西から鳴り響いてくる。
寝ぼけ眼で服をかえ、中庭へ出た。寒い。音はまだ響いていた。井戸をつかおうとして、ショックをうけた。井戸水が凍りついている。あちゃあ……。
収納空間から出したお水で顔を洗い、歯を磨いた。それから用を足して、手を洗い、厨房へ向かう。今日はお休みだ。お昼にお弁当を売るのと、お茶の時間にお菓子を売るだけ。材料はたっぷりあるし、たまには買いものもお休み。
朝は、ハムエッグと、レアディさんが来るだろうから発酵させたパン、キャベツ・人参・蕪・腸詰めのスープ、ジャムをはさんだクッキー、にしようかな。お弁当は、発酵させたパンにローストビーフとキャベツと人参の酢のものをはさんで、切り株クッキーをつけよう。お茶の時間のお菓子は、パウンドケーキにレモンの効いたアイシングをかけたもの……。
欠伸まじりにとぼとぼ歩いていると、髪の乱れたジーナちゃんとサキくんが宿泊棟から飛び出してきた。俺はきょとんとする。続いて、寝間着姿で髪を引き摺るユラちゃん、完璧に服装を整えたリッターくんとミューくんも。
とりあえず云った。「おはよー」
「あんたってほんとに暢気ね!」ユラちゃんが喚く。「試験結果が出たのよ!リッター、馬車を用意なさい!」
「用意するからお前はきがえろ」
リッターくんが冷静に返し、ユラちゃんは寝間着に気付いて赤面した。