異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
市場で、お米を含め、目についた必要そうなものを片端から買っていく。お米に関しては買い占めた。穀物屋さんをもう一軒見付けて、そこでも。
配達を断ってゼラチンのつぼをひょいひょい収納し、あしばやに四月の雨亭へ戻る。人通りが多いのは、試験結果を見に行くひと達だろう。俺も気になるが、おいしいものをつくって待つと約束した。だからお料理をする。
厨房では、ツァリアスさんがお茶を淹れて、レアディさんとキョウさんに出していた。もうひとり、三十代後半に見える女性が居る。服装を見るに、ユラちゃんの侍女だ。
ツァリアスさんは、侍女さんにはお茶と一緒にジャムの小皿を出していた。侍女さんはお匙でジャムを掬い、舐めながらお茶を飲む。
手を洗う。「ツァリアスさん、手伝ってください」
「はい」
俺がお茶ありがとうございますと云うと、隣に並んで手を洗うツァリアスさんは、微笑んで頭を振った。
レアディさんからパンとバターを、キョウさんからお豆腐を買って、侍女さん含め三人を朝食に誘い、お料理開始。
お握り、大根とミートボールのおでん、マサーラーチャイ、シロップ漬けのくだものを沢山いれたゼリー、マシュマロをはさんだ生姜クッキー、キャベツの即席醤油漬け、牛肉を煮たやつ。
牛肉は大きめのりんごくらいの塊にする。軽く叩いて、お塩をもみこむ。たまねぎ・にんにく・大根のすりおろし、潰したバナナと一緒にお鍋にいれて放置。
その間に、よく手を洗ってから別のお料理を拵える。大根を昆布かつおだしで煮込み、ご飯を炊いて、キャベツと人参を切ってお塩をもみこみお醤油をかけて重しをし、シロップ漬けのくだものを軽く煮てとかしたゼラチンとまぜて型に流し、大根のお鍋を火から外してもらって(俺の体力では不可能)、ミートボールを揚げてから昆布かつおだしで煮込む。マサーラーチャイはツァリアスさんに淹れてもらったし、生姜マシュマロクッキーは収納空間に沢山ある。
ご飯を蒸らす間に牛肉の仕上げ。火にかけてゆっくり加熱する。かきまぜていると、すりおろしたお野菜が飛び散って腕や顔に付く。火傷は仕方のないことだ。
ふつふつしてきたら、ローズマリー・クローブ・シナモンを少しずつと、ドライトマト・トマトソース・ウスターソースもどきを加え、ブロードを少しだけいれて蓋をし、弱火で煮込む。
「マオさん、張り切ってますね」
井戸端で手と顔を洗って戻った俺に、マサーラーチャイをつくっているツァリアスさんが云う。俺はへらへら笑った。こういう時へらへらしてしまう自分が嫌いだ。
「おいしいものつくって待ってるって、約束したので」
そう、約束はまもらなくちゃ。お握りつくるぞ。