異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
ミューくん達がご飯を食べ終え、お皿を流しへ運ぶ。そのまま、袖をまくり上げて、食器洗いをはじめた。「みんな、休んでていいんだよ」
「ううん、わたし、お皿洗い好きなの」
「僕もですよ」
ジーナちゃんとサキくんが云い、ミューくんはおどけて両手を肩の高さへ上げる。「ふたりがやるんなら俺は遠慮しようかな。お皿を拭くよ」
「ミューったら」
「リッター、手際がいいね」
サキくんがくすっとする。リッターくんはたらいにお水を張り、片手をいれてあたためていた。熱魔法便利。
ユラちゃんがぴょんと跳ねた。「皿くらいわたしが乾かしてあげるわ!」
そのまま、五人で作業を始める。食器を洗うのはジーナちゃんとサキくん、ゆすぐのがリッターくんで、ユラちゃんがざっと乾かし、ミューくんが丁寧に拭いて戸棚へ戻す。連携がとれているし、無駄がない。すげー。
俺もミューくんと一緒にお皿を仕舞う。ヤーヌさんはにこにこしてユラちゃんを見ていた。
「そういえば、リオちゃん、どうだった?うかったよね」
「はい」
リオちゃんも腕っ節が強いみたいだったから、大丈夫だろうとは思っていた。能力値も高いし。でも、うかったとはっきり聴いて、ほっとする。
サキくんが云う「彼女は来てませんでしたけど、彼女の家族が来ていました」
「ああ……まだ謹慎?」
「みたいですね。それさえはっきり教えてもらえません。どうも、僕が彼女をそそのかしたことになっているようで……」
「サキは悪くないわ」ジーナちゃんは機嫌悪げだ。「まるで、彼女に意思がないみたい」
「僕はこんな見た目だから、なにかと悪事の原因にされがちなんだ」
「人助けを悪事にいれなくってもいいようなものだけどなあ」
ミューくんがのんびり云い、リッターくんが頷く。「サキの見た目にはなんの問題もない」
「そうね。うちの朴念仁だって髪が短いけれど、問題ないと思うわ」
サキくんは嬉しそうににこっとして、ありがとうみんな、と云った。
食器がすべて綺麗になって、五人は手を拭って、ちょっと黙る。
サキくんが話の口火を切った。「ええと……なんていったらいいのかな。僕は、今日中にも、レントを発つことになると思う。だから、これでお別れなんだけど……」
「お別れじゃないだろ」ミューくんがにこっとする。「来年一緒に入山するんだ。寮は違うけど、俺達友達じゃないか」
「……そうだよね。ありがとう、ミュー。……ジーナも、僕と友達でいてくれる?」
「あなたはミューの友達だから、わたしも仲好くさせてもらうわ」
ジーナちゃんは微笑んだけれど、サキくんを友達とは決して云わない。サキくんもくいさがりはしなかった。
ユラちゃんが胸を張る。
「わたしは友達になってやってもいいわよ、サキ」
「ふふ、ありがとうユラ」
「リッター、あんたもサキの友達でしょ」
「ああ」
リッターくんが即答すると、サキくんはなんだか安堵したみたいだった。