【本編20万字完結】カストラート 〜傾国の歌劇(オペラ)〜【幕間更新あり】
僕のあまりにも冷徹な自己分析を聞いた『私』は、脳内で激しく、必死に首を振って僕の言葉を真っ向から否定した。
その声は、今にも大粒の涙を零して泣き出しそうなほどに震えている。
『そんな……!そんなの酷すぎるわ、カース……!あなたはただ、与えられた理不尽な運命に、子供の小さな身体で精一杯抗って、必死に生き延びてきただけじゃない!悪いのは全部、あなたを最初に傷つけたあいつらでしょう……!?奪われたものを取り戻すために必死で生きた結果が大罪人で、地獄行きが確定だなんて……そんなの、そんなの理不尽すぎるわよ……!!』
『私』は、僕がその細い背中に背負おうとしている暗い未来を、全力で、必死に拒絶していた。
『あなたは悪くない』
『私がずっと、あなたの傍についているから』
自分自身も復讐劇の残酷さにボロボロになりながら、それでも『私』は僕を必死に励まし、奈落の縁から光の方へ引き戻そうと両手を伸ばしてくれる。
けれど、僕はそんな『私』の純粋で、温かい優しさに魂を救われながらも――皮肉なほど冷静に、自らの呪われた運命を自覚し、受け入れ始めていた。
どれだけもっともらしい理由を並べ立てようと、僕が流した数多の血はこの身にこびりついて消えない。
目的のために、愛欲に堕ちた教皇にこの身体を売り、非道な私兵を操り、実の弟をじわじわと嬲り殺しにし、生まれ育った故郷すらも灰にした。
天上のソプラノを持つこの美しく、まだ幼い身体は、すでに内側からドス黒い罪悪の泥で並々と満たされているのだ。
((……ありがとう、『ミーナ』。君だけは、どんな時も僕の味方でいてくれるんだね))
フードの奥の暗闇で、僕は誰にも見えない、酷く歪で小さな微笑を浮かべた。
神の救いを求めることを完全に諦め、自らが地獄の住人であることを完全に受け入れる。
ガタゴトと音を立て、駅馬車が王都の巨大な城門をくぐる頃、僕の瞳からは一切の迷いが消え去っていた。
そこにあるのは、ただ底の知れない、美しくも冷酷な『奈落の闇』。
すべてを焼き尽くした少年の瞳には、ただ深く、静かに、決して晴れることのない常闇だけが宿り続けるのだった。