【本編20万字完結】カストラート 〜傾国の歌劇(オペラ)〜【幕間更新あり】
ゆうべ、とても不思議な夢をみた。
ひどくおぞましくて、それなのに、なぜかたまらなく幸せな未来を予感させる、おかしな夢だった。
——その夢の中では、兄上が死んでいた。
そして、父上と母上が、他のどんなものよりもこの僕のことを一番に大切にしてくれて、たくさん愛してくれていたんだ。
それに、どうすれば兄上を事故に見せかけて殺せるかという、その具体的な方法まで、まるで誰かが耳元で囁いてくれたみたいに、夢がはっきりと教えてくれた。
僕が、兄上を殺すだって?
そんな、まさか……。
けれど、もしも兄上がいなければ、僕は今頃……。
兄上さえ、いなくなれば——僕はやっと、父上と母上の一番になれるのだろうか……。
心臓を握り締められたように胸が痛い。
息が詰まるような恐ろしい罪の意識。
それと同時に、頭がとろけてしまいそうなほど甘い誘惑が、代わる代わる僕を襲ってくる。
頭の中がぐちゃぐちゃになって、どうしても思考がまとまらない。
僕は、これからどうすればいいんだ――。