【本編20万字完結】カストラート 〜傾国の歌劇(オペラ)〜【幕間更新あり】
入学から十一ヶ月が経った、熱気を孕んだ夏の夜のこと。
街中が色鮮やかなランタンの幻想的な光で満たされる中、王都の大聖堂前広場では、教会主催の『夏季チャリティ音楽祭』が大々的に開催されていた。
この音楽祭は、もともとは教会の炊き出しと同じく「貧民救済」のチャリティという意味合いが強い。
けれどその実態は、集まる聴衆から落とされる莫大なや、お忍びで客席にやってくる高位貴族――すなわち僕たちにとって将来のパトロン候補となる大物たちへの強力なの場。
音楽院にとっては、一年の中でも特に気合が入る最重要行事の一つだった。
「カース、衣装の崩れはないかい? 最高のステージにしよう!」
「うん、ミハイル。僕たちの声を、この王都の夜空に響かせよう!」
僕たちカストラートクラスは、お揃いの真っ白な聖歌隊の衣装に身を包み、夜空の下、松明の炎が揺らめく特設の野外ステージへと、静かに、けれど確かな足取りで上がっていった。