【本編20万字完結】カストラート 〜傾国の歌劇(オペラ)〜【幕間更新あり】
私掠船での航海はその後も順調に続き、僕は相変わらず甲板の上を縦横無尽に走り回りながら、テキパキと働いていた。
ガタつく船体の上、荒波に揉まれながらも、僕は手際よくロープを操る。
『』で素早く正確に帆を固定し、今度は『』を応用して太い丸太を軽々と牽引していく。
さらには、海賊船の定番である『カチカチの塩漬け肉』と『カピカピに干からびた乾燥野菜』しかない船内の絶望的に貧弱な食材を前にしても、僕は諦めなかった。
船医が壊血病予防のために最低限だけ育てていた、貴重なハーブの鉢植えから数葉を拝借し、そこに安物のラム酒を豪快に突っ込んでじっくりと煮込む。
そうして、前世の知恵を総動員した見事な『キャンプ風・肉煮込み』を作り上げてみせたのだ。
「おいおいおい、見ろよ!カースの野郎、今度はあのややこしいロープを『』で完璧に固定しやがったぞ!」
「なんなんだあの手際の良さは!?それにこの飯の美味さはよぉ……!まるで年季の入った熟練のアウトドア野郎じゃねぇか!」
荒くれ者たちが口々に感嘆の声を上げ、僕をますます『幸運の天使(兼・極上のシェフ)』として崇め奉る中――。
肝心の僕の脳内では、僕自身の、あまりにも素朴で真っ当な疑問が激しく爆発していた。