【第一章完結】霊が導き、霊を導く悪魔祓いの異世界霊能者~異世界で霊視持ちの俺、聖魔の力で悪魔祓いやってます~
「地図なんか見るんじゃなかった」
俺は深いため息をつく。
新しい俺専用の武器のためにブレイムズに行くぞと意気込んでいたのだけど、そんなやる気ももうなくなっていた。
だってブレイムズ、遠いんだもの。
どれぐらいかかりそうか計算しようと地図を見て、俺はしばらくブレイムズという地名を探した。
しかし最終的にはニヤニヤとしたデラが場所を教えてくれた。
地図にも載らない辺境の集落。
それがブレイムズだった。
「馬車もなし、途中に大きな町もなくなる……なんだってそんな田舎に」
ブレイムズがある場所はかなり遠かった。
それだけでなく、周辺に町もない。
当然ながら唯一の移動手段となる馬車なんてものもブレイムズには通っていない。
つまりは多めに荷物を抱えて徒歩。
夜には野営となる。
なかなか辛い旅だとため息も漏れてしまう。
「理由はいくつかある。まず悪魔からバレにくい。それに近くで鉱石が取れる」
ゲルディットがさらりと理由を説明してくれる。
「うーん……」
なかなか文句も言いにくい理由だ。
悪魔祓いの武器を使っているとなれば、悪魔から狙われるのは当然とも言える。
バレないように、かつ周りにも被害が及ばないようにと考えると辺境の地になるのも理解はできる。
ついでに武器を作るための鉱石も手に入るなら言うこともないのだろう。
「遠いというのは俺も同感だがな。壊したらまたブレイムズ行きだから丁寧にも使うようになるのさ」
専用の武器は余程の事情でもない限り自分で受け取らなきゃいけない。
武器の修正、修理、作り直しなどどんな場合でもブレイムズに行く必要があるので、壊すような荒々しい使い方も少しは控える。
ただ俺の第一の目的は悪魔を倒すことだ。
そのためにはブレイムズに通うことにもなるかもしれない。
「俺の知ってるバカは何度も武器壊して泣きべそかきながらブレイムズに向かってた。しかも武器壊すと職人どもが怖いんだ」
「……気をつけなきゃいけませんね」
俺も武器の扱いが丁寧とは言えない方である。
まだまだ発展途上で実力が追いついていないところもあるので、今後は気をつけなきゃいけないなと思った。
「別にさ、エリ君はいいと思うけど、私たちはエリ君のために付き合わされる形なんだよ?」
「うっ……それは確かにそうですね……」
俺は武器をもらえるという利益がある。
だから比較的文句も少なめだ。
しかし他の三人はブレイムズに向かう利益はない。
イタズラっぽく笑うデラに俺は頬をつつかれる。
「パシェちゃんも不満よね?」
「別にエリシオのためなら平気」
「あら? 好かれてるのね。いまだに私にはあんまり近づかないのに」
パシェとデラは特に仲が良くはない。
ただ悪いわけでもない。
デラはパシェに近づこうとしているが、パシェはずっと一定の距離を保っている。
どうにもデラはパシェが獣人であることも知らないらしい。
それとは別として、俺自身割とパシェとは仲良くなったような気もしている。
おしゃべりするわけじゃないが、パシェとの距離は近くなった。
俺を盾にしてデラと距離を取っている疑惑もあるけれど、盾にされるだけ信頼はされている。
「次の町を出たら、しばらく大きな町はない。準備はしっかりするようにしておけ」
今もブレイムズまでの道中だ。
だいぶ田舎の方に移動してきて、そろそろ補給も厳しくなるところに入っていくぐらいのところだった。
「大切なのはメシだな」
娯楽の少ない旅での楽しみは食事である。
最終的には日持ちのするもので凌ぐことになるのだけど、できるだけ食事を華やかにするように食料はたくさん持っていきたい。
町に入って、まず宿を取った俺たちは買い物に出かける。
「ちょっと贅沢してやるか……」
金はやるから好きに買ってこい。
俺は休むから。
そんなことを言ってゲルディットは俺に財布を投げ渡した。
こうして下の連中に任せられるのは年長者の特権だ。
「さて……良い店はあるかな?」
旅を続けていると色々と分かるもんだ。
品質が良くないものを高値で売りつけるぼったくりの店も、少なからず存在している。
騙されないようにするためには、しっかりと店や商品を見極めねばならない。
「……あそこ」
「あの店か?」
こうした時に役立つのは俺よりもパシェだ。
あまり物に興味を示さないパシェも食べ物に妥協はしない。
目だけでなく鼻も活かして良さそうな店や商品を見抜くのが上手いのだった。
パシェが目をつけたのは肉屋。
店先に肉の塊が吊るしてある。
「良さそうだな」
見える位置に肉の塊が置いてある。
肉なんてすぐに腐りやすいものをディスプレイしているということは、毎日ちゃんと仕入れをして新鮮な肉を置いているということだ。
新鮮な肉は持っていくにもすぐに痛むが、最初の数日ぐらいは楽しみになってくれる。
「いらっしゃい」
白い口髭の無骨なオヤジ。
人をうまく誘導しようという薄い笑顔を浮かべた店員じゃないのもポイントが高い。
「乾燥肉はありますか?」
まず探すのは日持ちする食材だ。
新鮮な食材よりも、後々食べることになる日持ちする食材の方が良いものを用意しておきたい。
「あるよ。単なる日干しと燻製したものがある。保存食が欲しいなら塩漬けもあるぞ」
「全部ください」
味は色々あるに越したことはない。
荷物が多いとデラは不満そうにするが、俺が多く待てばいいのだ。
「お前ら、旅でもしてるのか?」
オヤジが注文したものを出して見せてくれる。
確認もさせてくれるのは良い店の証拠だ。
「ええ、ここから先にちょっと用事が」
「先……デリムランの方か。なら少し気をつけろよ」
「何かあるんですか?」
正確にはデリムランに行く途中で道を逸れてブレイムズに向かうのだけど、教える必要はない。
「あの辺りに最近山賊が出るんだ」
オヤジは顔をしかめて軽くため息をついた。