【第一章完結】霊が導き、霊を導く悪魔祓いの異世界霊能者~異世界で霊視持ちの俺、聖魔の力で悪魔祓いやってます~
「ホントにぃ?」
「ホントだ」
俺が今いるのはエリティケンのブラウ村。
これはただの通過点に過ぎない。
次の目的の前段階に立ち寄った場所になる。
ただこのブラウ村で次の指令を聞かされた。
「お前にはグルデンダカンに潜入してもらう」
俺たちが出すべき悪魔がいる次の地はグルデンダカン。
しかし、それはただの国ではない。
「ただし、身一つでだ。剣はおろか、短剣もなし。オヤツもなしだ」
「オヤツなしは厳しいな……」
グルデンダカンに潜入するのは俺一人。
さらにはせっかく作ってもらったピカピカの剣の持ち込みはできない。
それだけじゃなくナイフを懐に入れておくことすらできないのだ。
「しょうがない。奴隷の国だからな」
なぜそんなことをしなければならないのか。
それはもちろんゲルディットの意地悪ではない。
グルデンダカンはただの国ではない。
国というか都市に近く、おそらく一般的な国や都市でもないのだ。
ではなんなのか。
そこにあるのは奴隷の国なのである。
奴隷が平和に暮らす国なんてものではなく、奴隷が売られ、奴隷が働かされる無法地帯。
それがグルデンダカンという場所だ。
「国なんていうからつけあがるんですよ。そもそもなんでそんなところがあるんですか?」
俺にとって疑問でしょうがない。
奴隷の国なんて呼ばれるヤバい場所が存在していることが、俺の中の常識から外れたことだった。
「いろんな利権が絡むのさ。俺もよくは思わないが、悪魔ぐらいヤバい連中が複雑に手を伸ばしてる」
元々は肉体労働を強制される場所だった。
何かの鉱石が近くの山で採れるらしく、奴隷を送り込んで採掘から金属の精製までをやらせていた。
いつの間にか奴隷が多少の商売を始めたり、あるいは奴隷を売り買いしたり他にも色入りとやらせたりするうちに一つの大きな都市のようになった。
そして奴隷に関係する様々な利権が複雑に絡み合うになってしまった結果、誰も手を出せない空白地帯と化してしまう。
そんな場所だからしまいには国とまで呼ばれる場所になったのだった。
「そんなところに可愛い弟子を送り込むんですか?」
「一度やってみたかったんだ、生意気な弟子を売り飛ばすの」
「俺も経験してみたかったんですよ、極悪非道な師匠に売り飛ばされるの」
そして俺はそんなところに奴隷として送り込まれる。
せっかくおニューの剣を手に入れたのに、そんなもの奴隷が持ってちゃおかしい。
こんな悲劇があるだろうか。
「お前なら奴隷の中でもやっていけるだろうな」
「こんなに繊細なのに?」
「その繊細さで奴隷どもでも従えてろ」
表向きただの聖騎士となるはずだったのに、女性関係で左遷された聖職者だったり奴隷だったりと俺の演技力を買い過ぎだ。
「上の服を脱いでください」
ブラウ村にある宿の一室に俺はいるのだけど、指令を伝えてくれた悪魔祓いサポーターの他にもう一人女性がいた。
俺はその女性に言われて仕方なく上半身裸になる。
「んー、いい体してるわね」
俺だって脱いだらすごい。
顔と体が合わない。
そんなことをクーデンドから言われたことがある。
ゴリマッチョではないにしろちゃんと鍛えているから、それなりに見栄えのする体をしている自覚はあった。
デラは堂々と俺の体を見つめ、パシェはサッと顔を逸らしていた。
「それじゃあ奴隷の証、入れていきますね」
上半身裸になった俺に対して何をするのかというと、これならタトゥーを彫る。
タトゥーといっても普通のものではなく、奴隷であると証明するタトゥーだ。
「本当に消えるんですよね?」
「ええ、一月もすれば消えますよ」
本来なら売られる時にタトゥーが入れられるのだけど、その時に入れられるものはガチの証で一生残る。
一回の潜入のために一生残るタトゥーなんてやってられない。
だから時間が経つと消える素材で、一時的にタトゥーを先に入れておくのだ。
女性はいわゆる彫り師のようなもので、俺の体にイカした奴隷の証を刻んでくれる人であった。
「ちょっと熱いですよー」
俺は椅子の背もたれに抱きつくように座る。
女性は俺の左肩のあたりに筆を近づける。
熱湯でも浸したのかと思うような筆先が俺の肌に触れ、思わず顔をしかめる。
歯医者なら手を上げてアピールしているところだ。
「手を握っててあげましょうか?」
「それならパシェの方がいいですね」
デラの手よりパシェの肉球ハンドの方がいいなと俺は思う。
「ん?」
「………………ありがと」
パシェが手を差し出してくれる。
ただ生の手ではなくて防具を身につけての手であった。
そうじゃないんだなぁ。
そんな言葉は飲み込んでパシェの配慮に応える。
「ほう、上手いもんだな」
左肩の背中側にタトゥーを刻んでいるので、俺からはどんな感じになっているのか見えない。
しかし覗き込んだゲルディットが眉を上げているのでそんなに悪くなさそうだ。
「悪そうに見えますか?」
「それからすればずっと悪ガキだ」
「ワル親父に言われるなら悪くないですね」
俺の体に奴隷の証が刻まれた。
これから俺は奴隷となる。
こんなことなら秘密兵器扱いなんて断って、最初から悪魔祓いにしてもらえばよかったとため息を漏らしてしまうのだった。
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